解説
三島由紀夫の同名小説を「黒の爆走」の舟橋和郎が脚色、「眠狂四郎殺法帖」の三隅研次が監督した文芸もの。撮影もコンビの牧浦地志。
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2025年5月13日放送
BS12 トゥエルビ
この作品のレビュー
ユーザーレビュー
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ミャーノフ大佐
冒頭、映画のクレジットを見て市川崑か、映画本編を見て大島渚の「日本の夜と霧」を思い出され、若松孝二の政治的なピンク映画を思い出された。
相変わらず画面の構図はきっちりと設計されていて、剣道場での構図、男と女の会話のカットバックと画面アップでカメラ正面に話しかける構図。
これは当時の松竹ヌーベルバーグやATG映画を彷彿とさせる。三隅研次が日本のヌーベルバーグを意識していたか、いなかったのかはわからないが、明らかに当時の波の影響を受けただろう。
で、この映画の原作が三島由紀夫と知って、ああ、なるほどと納得した。いわゆる三島美学を映画表現した物だ。
ただ、文句を言えば、このストーリーが大学剣道部のお話にしているところだ。1大学のその中の一つの体育会系の部の中の話になっている。世界が狭すぎる。これがもっと外の世界に広がると、新左翼系または新右翼系の内紛とかとして描くことが出来たろうに。一剣道部の話として閉じ込めているので、そんなにストイックにならなくても良いのにと思ってしまう。ラストの、剣道部OBと剣道部の部員達で主将(雷蔵)のことを話しているが、その美学も一剣道部内での話ではなかなか共感しづらい。吉田喜重の「戒厳令」の北一輝ぐらいだとスケールも大きくなるのに。
ちなみに若松孝二は後年「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」で三島を描いている。
「剣(1964)」のストーリー
東和大学剣道部主将国分次郎は、純粋に剣の世界に打ちこんでいた。剣に全生命をかける厳しいキャプテンの姿を、新入部員の壬生は神の如く、偶像視し、彼の行き方を学ぼうとした。国分の同級生で三段の賀川は、剣を愛し乍ら、適当に遊ぶタイプで、国分の息苦しい考え方と対照的であった。こうした部内の不満を一身に受けて、監督する木内もまた勝負で片がつく剣の世界を愛していた。強化合宿のシーズンがやってきた。合宿費用捻出のため、デパートにアルバイトに出向いた賀川が、勤務中禁煙の規則を破った。国分は部員全員を道場に集め制裁に処した。ますます国分に対して競争心をかられた賀川は、学内ナンバーワンと言われる伊丹恵理を使って国分を誘惑しようとした。恵理から国分が彼女の肉体を求めたことを聞き賀川はかすかな優越感に酔った。夏の強化合宿の日、国分の見事な統率力に反溌を持った賀川は、剣道部に厳禁されている水泳に誘った。ためらう部員に国分が恵理を誘惑したことを説き、偶像から下した。海に向って走る部員たち。唯一人、壬生だけは、国分を裏切れず合宿所に残るのだった。木内監督に見つかり賀川は即刻帰京を命じられた。責任をとってうなだれる国分の姿は壬生には敗北的にみえた。数日後の納会の日、ねぎらいの言葉を残して席をたった国分を追った部員の前に、胴を着け、竹刀を抱えて絶命している国分の姿があった。通夜の日、恵理は、賀川に語った事実は嘘だと告白した。
「剣(1964)」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「剣(1964)」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | 文芸 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 1964 |
公開年月日 | 1964年3月14日 |
上映時間 | 95分 |
製作会社 | 大映京都 |
配給 | 大映 |
レイティング | 一般映画 |
アスペクト比 | シネマ・スコープ(1:2.35) |
カラー/サイズ | モノクロ/シネスコ |
音量 | モノラル |
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