「迷子」のストーリー
原因不明の新しい伝染病が蔓延する台北の街。昼下がりの公園のトイレに、年配の女性(ルー・イーチン)が出たり入ったりを繰り返している。どうやらお腹を下しているらしい。一緒に3歳の孫を連れてきているが、公園でひとり待たせている。孫のことも気になるものの、これだけはどうにも仕方がないようだ。やっとの思いで公園に戻ると、今度はなんと孫がどこかへ行ってしまった。孫を預けたはずの老人は見当たらず、交番に駆け込んでもアナウンスしてくれるだけ。公園中を探し回るが孫の姿は見つからず、家族に連絡しようとしても誰ともつながらない。台北の街を舞台に、おばあちゃんの必死の捜索が始まる。強引に他人のバイクの後に飛び乗り、流しの屋台のマイクからは孫の名前が流れ、色々な人に孫の行方を問いかけるが、どうにも手がかりが掴めない。一方同じ街の片隅では、祖父が作ってくれた弁当を公園の枝にくくり付けてファーストフードで食事をすませ、一日中インターネットカフェに入り浸っている少年(チャン・チェア)がいる。その頃、老女の孫探しを手伝うはめになった親切な運転手は、彼女の亡くなった夫が眠る墓地へとバイクを走らせる。老女は亡き夫の墓に供え物をし、孫を返してくれと訴えるが、応える人はいない。夜の帳もすっかり落ちた公園をひとりぶらつく少年は、帰ってこない祖父が気になり始めている。そして、精も根も尽き果てた老女も、人気のなくなった公園でとうとう座り込んでしまう。そのとき、ほんの一枚のフェンスで仕切られた公園のこちら側に、見覚えのある人影が近づいてくる。