ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?の映画専門家レビュー一覧
ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?
ロック史上最大の謎のひとつとされる圧倒的な人気バンドが消えた理由、陰謀と真相に迫るドキュメンタリー。1960年代後半から70年代に脚光を浴びたロックバンド、ブラッド・スウェット&ティアーズ。彼らの冷戦下の東欧ツアーの模様や未発表映像、政治に関係した機密データにより、国家的キャンセルカルチャーに巻き込まれて失墜した経緯と、隠された冷戦の歴史を明らかにする。監督は、「ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン」「PEACE BED アメリカVSジョン・レノン」などの音楽ドキュメンタリーを手がけてきたジョン・シャインフェルド。2024年全米脚本家組合賞にてドキュメンタリー脚本賞を受賞。
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俳優
小川あん
‘70年代に活躍した8人組のロックバンド(ジョニー・キャッシュの曲名からそのまま拝借した、バンド名とのこと。知らなかった……)。時系列を示す多くの写真と映像、そして関係者のインタビューを含む模範的なアーティストの音楽史。膨大な資料を背景にすると、BS&Tの歌詞と曲調に理解が増してくるのだけれど、ヴェトナム戦争も、アメリカの政治事情も詳しくないので、アーティストよりも歴史的背景のほうが興味深い。その印象が強く残ってしまって、少し残念。
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
ヴェトナム反戦運動の時代に、ロックバンドが、国務省主導で東欧ツアーを行うことが持ってしまう意味。バンドをスターダムに押し上げた強力な二代目ヴォーカルが、政府につけこまれるウィークポイントになったという皮肉。未発表映像と機密資料で驚愕の事実が次々明らかに。「東側の国が全部同じだったわけではない」ことが具体的にわかるのも面白いが、何よりも、毀誉褒貶に遭った偉大な音楽家たちの再評価であり、破壊され失われたと思われていた映画(東欧ツアーの記録映画)の、感動的な救済。
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編集者/東北芸術工科大学教授
菅付雅信
60年代後半?70年代初頭の米人気ロックバンド「ブラッド・スウェット&ティアーズ」が米国務省主催による東欧諸国を回る「鉄のカーテンツアー」を実施した様子を捉えた映像と現在の関係者の証言からなるドキュメンタリー。東西冷戦の中で「音楽の政治的利用」を巡る興味深い内容で、ニュース素材や当時の時代感を伝える映像もうまく織り交ぜた構成だが、いかんせんバンドそのものに強い魅力がなく、驚くような発言があるわけでもないので、映画として観客をグリップする力に欠ける。
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