対外秘の映画専門家レビュー一覧

対外秘

「悪人伝」のイ・ウォンテ監督が、極秘文書を盾に巨大な権力者に挑む男の下剋上バトルを描いたサスペンス。闇の権力者スンテにより党の公認候補から外されたヘウンは、裏ルートで入手した極秘文書を武器にギャングのピルドから選挙資金を得て無所属で出馬するが……。下剋上を仕掛ける弱小政治家ヘウンを「毒戦 BELIEVER」のチョ・ジヌンが、フィクサーのスンテを「復讐の記憶」のイ・ソンミンが、一獲千金を狙うヤクザのピルドを「悪人伝」のキム・ムヨルが演じる。
  • 文筆業

    奈々村久生

    地方の一政治家から国政を目指す男のなりふり構わぬ奮闘と復讐劇に、釜山国際映画祭のお膝元でもある海雲台エリアをめぐる利権ドラマが絡む。人々の思惑が入り乱れ、誰にとっても思うようにいかない選挙戦が終盤で見せる驚異的なねばり。韓国版「最後まで行く」で怪演を披露したチョ・ジヌンの終始胡散くさい立ち回りは、人は環境次第で善にも悪にも簡単に転ぶという現実をあまりにも人間らしく証明した残酷なサクセス・ストーリーでもある。剃髪で役に臨んだイ・ソンミンの異形っぷりも見もの。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    韓国でも、もちろん日本でも、いちおう民主主義だってことになってる国で政治を仕事にするというのは本当にこういうことなんだろう、人も本当に殺されるんだろう。映画を観るほうもそのくらいのことは思ってるし、応援したくなる魅力的な登場人物が(女性記者もふくめて)誰もいないので、「衝撃のラスト」に衝撃がない。もっとヤクザを悲しい造形にしておくとか、主人公が最初のうちは本物の正義の人であるとか、やりかたはあっただろうに。政治に呑気に絶望している場合ではないと思うのだが。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    ポリティカルドラマ、または土地の再開発をめぐって動く大金を狙った出し抜き合いの物語。……でありつつ、核となるのは他の登場人物たちを削り落としていって、残った男二人の、知能と暴力的感覚を最大限に活かした決闘である。自らの陣営の重要な駒となる人物の、どれを泣く泣く潰して地盤を固め、相手の意表を突いて失脚させるかという頭脳戦だ。相手を蹴落とすはずの証拠も過信すると、思いがけないしっぺ返しが来る。地味だが最後まで予想がつかない良質なサスペンスだ。

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