少年と犬(2025)の映画専門家レビュー一覧

少年と犬(2025)

馳星周の直木賞受賞作を、高橋文哉&西野七瀬のダブル主演で映画化。震災から半年後の宮城県仙台市。職を失った青年・和正は、同じく震災で飼い主を亡くした一匹の犬・多聞と出会う。瞬く間に和正や家族に懐く多聞だったが、常に西の方角を気にしていた……。監督は「春に散る」の瀬々敬久。「冬薔薇(ふゆそうび)」の伊藤健太郎、「映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」の伊原六花が共演。
  • 映画評論家

    上島春彦

    馳星周がこういう原作を書いているとは驚いたが、私が無知なだけでした。瀬々敬久の毒々しさと抒情性を兼ね備えた演出、そして連作をうまいこと一本化した林民夫の脚色もいい。宣伝だとネタバレ厳禁なので『名犬ラッシー』調の企画と思われそうだが、見れば分かるように、迷い犬の多聞をどこまでも追ってくる高橋文哉が鍵となる。しょっぱな、多聞はガーディアン・エンジェル(守護天使)と規定されるのだが、高橋も西野七瀬の守護天使なんだね。西野が××嬢ってのも驚きの好配役。

  • ライター、編集

    川口ミリ

    原作の淡々とした筆致とは異なり、映画はコミカルに幕を開ける。高橋文哉演じる主人公が陽気な語り部となるのだが、訳ありとはいえ闇バイトに手を染めた彼に、ここまで倫理的な葛藤や切迫感がなくていいのか。諸社会問題はもはや物語を進行するための駒でしかなく、後半は感動ポルノ的なドラマへと強引に転調する紋切り型の流れ。各キャラは薄っぺらで、ショットもなんだか味気ない。ただ多聞に扮する、シェパード犬のさくらはナイス配役。憂いをたたえた瞳にほとんど唯一、役の深みを感じた。

  • 映画評論家

    北川れい子

    この映画における犬の多聞は主役というより世相や時代を描くための狂言回し的。いや、それが悪いわけではないが、多聞が出会ういずれも孤独な人々のエピソードが重すぎて息苦しいことも。特に西野七瀬のパート。多聞は森の中での彼女の異様な行動を静かに見ている。これって、ここ掘れワンワン? が彼女はとんでもない秘密を抱えていて、しかも多聞、危うく彼女に殺されそうに。南を目指す多聞が横切る四季それぞれの叙情的映像は効果的だが、へヴィな美談である。

  • 映画評論家

    上島春彦

    馳星周がこういう原作を書いているとは驚いたが、私が無知なだけでした。瀬々敬久の毒々しさと抒情性を兼ね備えた演出、そして連作をうまいこと一本化した林民夫の脚色もいい。宣伝だとネタバレ厳禁なので『名犬ラッシー』調の企画と思われそうだが、見れば分かるように、迷い犬の多聞をどこまでも追ってくる高橋文哉が鍵となる。しょっぱな、多聞はガーディアン・エンジェル(守護天使)と規定されるのだが、高橋も西野七瀬の守護天使なんだね。西野が××嬢ってのも驚きの好配役。

  • ライター、編集

    川口ミリ

    原作の淡々とした筆致とは異なり、映画はコミカルに幕を開ける。高橋文哉演じる主人公が陽気な語り部となるのだが、訳ありとはいえ闇バイトに手を染めた彼に、ここまで倫理的な葛藤や切迫感がなくていいのか。諸社会問題はもはや物語を進行するための駒でしかなく、後半は感動ポルノ的なドラマへと強引に転調する紋切り型の流れ。各キャラは薄っぺらで、ショットもなんだか味気ない。ただ多聞に扮する、シェパード犬のさくらはナイス配役。憂いをたたえた瞳にほとんど唯一、役の深みを感じた。

  • 映画評論家

    北川れい子

    この映画における犬の多聞は主役というより世相や時代を描くための狂言回し的。いや、それが悪いわけではないが、多聞が出会ういずれも孤独な人々のエピソードが重すぎて息苦しいことも。特に西野七瀬のパート。多聞は森の中での彼女の異様な行動を静かに見ている。これって、ここ掘れワンワン? が彼女はとんでもない秘密を抱えていて、しかも多聞、危うく彼女に殺されそうに。南を目指す多聞が横切る四季それぞれの叙情的映像は効果的だが、へヴィな美談である。

1 - 6件表示/全6件