ドリーム・シナリオの映画専門家レビュー一覧
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映画監督
清原惟
ニコラス・ケイジ扮する地味な大学教授がたくさんの人々の夢に出てくる、といったあらすじを読んで「マルコヴィッチの穴」的なSF感のある映画なのかと想像していたが、全く違うものだった。起きていることは超常現象でも、それに対する人間の反応はとても現実的で、非のないはずの主人公が、ネットやメディアでの立ち振る舞いによって罰せられていく様に現代の残酷さを見た。主人公の冴えなさの絶妙なさじ加減や、胡散臭いベンチャー企業の若者たちの言動など、ディテールが印象的だった。
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編集者、映画批評家
高崎俊夫
プレスに名優とあるが近年は迷優の呼称がふさわしいニコラス・ケイジがアリ・アスターと組んだホラー。「マルコヴィッチの穴」みたいな不条理コメディを予想したがさにあらず。ケイジ扮する大学教授が何百万人もの夢の中に現れ、一夜明けたら超有名人というアンディ・ウォーホルのマキシムとユング心理学を合体させたようなアイデアは面白い。しかしバカバカしい荒唐無稽な弾けた笑いを期待するも、シリアスな語りで通り一遍なキャンセルカルチャー批判に収斂したのが惜しまれる。
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映画批評・編集
渡部幻
ノルウェー人監督ボルグリの映画では「シック・オブ・マイセルフ」の現代的な自意識の観察に感心した。新作はアメリカが舞台で、キャンセルカルチャーに晒された実在の教授から発想したのだという。ニコラス・ケイジ扮する冴えない教授が、生徒をはじめ様々な人々の夢の中に出てくるようになり、有名人になるが、やがて理不尽な排斥の餌食になる。チャーリー・カウフマン風の夢のイメージはさほどのものではないが、イメージが意識下を侵食して現実感を狂わせるSNS時代の自意識を風刺しようとしている。
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