ベルナデット 最強のファーストレディの映画専門家レビュー一覧
ベルナデット 最強のファーストレディ
カトリーヌ・ドヌーヴが実在するカリスマ・ファーストレディを演じる、愛と人生を賭けた大逆転コメディ。メディア対応が壊滅的なため、ジャック・シラク大統領夫人としての仕事を与えられず居場所のないベルナデットは、かつて知事を目指していた宮殿職員のベルナールを参謀に復讐計画をスタートさせる。共演は「12か月の未来図」のドゥニ・ポダリデス、「天国でまた会おう」のミシェル・ヴュイエルモーズ。監督は本作で2024年セザール賞新人作品賞ノミネートのレア・ドムナック。
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文筆業
奈々村久生
かつて男性のサポート役としてその功労が描かれてきた女性の活躍を表舞台のものにする時代の流れと、大統領の妻であったベルナデット・シラクの実話を上手く融合させたストーリーテリング。宿敵サルコジとの間での立ち回りやプライベートな家族問題まで過不足なく詰まっていると同時に、女性エンパワーメントのフォーマットに沿って口当たりよく記号化されているような側面も。その上でドヌーブの鷹揚なコメディセンスが光る。特にフランスらしいエスプリの効いたシニカルなセリフの返しは絶品。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
政治を語るために人間を出すんじゃなく、人間を語るために政治がでてくる。こういうふうにやってくれると政治も映画の題材として面白いんだよなあ。現実のベルナデットの写真や映像によるオープニング直後、まったく似せる気がないドヌーヴがぬけぬけとでてきて笑った。観た人の多くがしびれるだろうラストの個人的な一言を言わせるためだけの、一国の一時期の政治史。こんな映画、日本でも作れないもんかね。同世代の関係者みんな死んでからでいいので安倍夫婦の奇人ぶりを描くとかさ。
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映画評論家
真魚八重子
フランスのメジャー映画はときどき演出がダサい。日本の娯楽路線の寒い笑いの映画に近いものがあって、本作も登場人物の善悪の分かりやすさが短絡的すぎると感じる。映画の中に一貫性が足らず、自立を図ろうとするベルナデットが、夫に秘密で大胆な政治的行動を取りながらも、夫の脅しでひるんでしまうなど、どっちつかずの演出が目に付く。誰の意向なのか、現実のベルナデットの洗練された服装に比べて、ドヌーヴが徹底してゴテゴテした趣味の悪い衣裳をまとうのも不思議だ。
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