サンセット・サンライズの映画専門家レビュー一覧

サンセット・サンライズ

楡周平による同名小説を原作に、宮藤官九郎脚本、菅田将暉主演で、「あゝ、荒野」「正欲」の岸善幸監督が映画化。コロナ禍に都会から宮城県・南三陸に移住した釣り好きのサラリーマン・西尾晋作は海で釣り三昧の日々を過ごすが、よそ者の晋作に町の人たちは気が気でなく、町のマドンナをめぐってある騒動が起きる。共演は「白ゆき姫殺人事件」の井上真央、「永い言い訳」の竹原ピストル。2024年11月、第37回東京国際映画祭にてワールド・プレミア。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    コロナ禍を描くうえで、重症患者や死者を頑なに映そうとしない映画界の不気味さは相変わらず感じるが、そこは差し引いても、現代日本のある様相を切り取ったエンタテインメントとして面白かった。郷里への思いがこもった宮藤官九郎の脚本、岸善幸のふざけすぎず堅実な演出がうまくハマった。もはや名優の風格を見せる竹原ピストル、少路勇介と見紛う三宅健(どっちも出演)、健在ぶりが嬉しい白川和子ほか、キャスティングも楽しい。これこそ宮城県の映画館で観たいご当地映画。

  • 映画評論家

    北川れい子

    南三陸の風景がいい。人物たちがみなクセがあって面白い。お節介なエピソードも無理がない。出てくる食べ物がおいしそう。そして喪失感や痛みに対しての節度ある距離感。観終わって思わず“ケッ”と呟きそうになったりも。白川和子が演じる地元の老婆が発する言葉で、あげるから持っていけ、ということらしい。そういえば宮藤官九郎脚本の朝ドラ『あまちゃん』のときは“ジェジェジェ”が流行ったが、本作の場合はぜひ観て“ケッ”! 菅田将暉の久しぶりに気張りのない演技も新鮮で、お年玉のような娯楽作。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    震災とコロナを背景に描きつつ、声高な叫びも揶揄もなく、食を介して日常の細部を映し出す。「悪は存在しない」でも描かれた地方と都会の共存が描かれるが、双方の陰湿さをカラッと描く手腕が際立つ。菅田が独りごちながら魚を取って食す場面が多いが、松重豊のようにはいかず空回り気味。竹原ピストルも同様。逆に芸達者組がうまく補助し、受けの芝居が絶品の井上に加えて、攻めの芝居を自在に繰り出す池脇千鶴と三宅健が素晴らしい。予想外の存在感を見せるビートきよしにも驚き。

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