ペパーミントソーダの映画専門家レビュー一覧
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映画監督
清原惟
1960年代のフランスを、10代の姉妹の日々を通してスケッチしたような映画。女子は政治活動をするな、恋愛はするな、といった厳しい規範の中で閉塞感や生きづらさを感じる生活を、紋切り型にはまらず描く手つきがよかった。時に性的な視線にさらされる彼女たちの身体を欲望の対象として直接写さずに、性的な欲望だけを可視化しているのにも好感を持つ。写真のアルバムをめくるように、大人になった彼女たちが思い出しているような視点で描かれており、優しさと懐かしさに包まれている。
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編集者、映画批評家
高崎俊夫
急進的なフェミニストと称されたディアーヌ・キュリスの初々しい長篇デビュー作だ。時代は1963年。両親の離婚で母親とパリで暮らすことになった二人の姉妹がリセに通いながら体験する刺激的な日々が活写される。ベタつかない、クールな距離感を保つ描写の積み重ねによって、彼女たちの抱える思春期特有の感情の揺らめきが画面から滲み出す。瞠目すべき才能と言ってよい。教師の理不尽な振る舞いに女生徒たちが一斉蜂起する場面など「新学期・操行ゼロ」を想起させる素晴らしさだ。
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ
英語で言う“スライス・オブ・ライフ”と日本オタクカルチャーで言う”日常系”のラインが曖昧になっていることを感じる昨今。“徒然なる短いエピソードで毎回オチをつけつつ、ささやかだが決定的な変化を大きな物語として描く”『あずまんが大王』『ひだまりスケッチ』『けいおん!』といった漫画に90年代末から触れてきた者として、そんなストーリー4コマ的話法の極北が47年前のフランスにあったとは……と感嘆。男性オタクに対する忖度がないので、完全なる上位互換かもしれない。
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