Underground アンダーグラウンドの映画専門家レビュー一覧
Underground アンダーグラウンド
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評論家
上野昻志
暗闇に光が点滅する。通り過ぎる地下鉄の光が支柱に反射する。音が響く。地下道の壁に影が揺れ動く。その影に手が伸びる。女性の手が樹木に文字をなぞる。その手は鉢植えの枝を撫でる。壁面に刻まれた像をさする。その感触が、確かに伝わってくると覚えるのはなぜか。地下に印された痕跡とその記憶。それを探る彼女の旅は、沖縄のガマにも到り、鍋底に残る骨にも触れる。ガマの開いた口から見える海が美しい。光と影を捉える撮影はもとより、そこに谺する音響が素晴らしい!
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ
“風景”や“場”を映し出すドキュメンタリーが好きである。風景の下に在る想いや歴史の深さを覗き見ることで、自分の感情まで深化する瞬間が好きである。そして何より、地下世界が好きである。……以上の“癖(ヘキ)”を持っているものだから、本作とは生理感覚レベルで呼吸が合った。そんな感覚面のみならず、“シャドウ”と呼ぶには実存性が高いアバターを媒介にして歴史の流れに入り込んでいく、思索の旅としても刺激的。尺はまったく違う作品だが「占領都市」に近い感慨を味わえた。
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
ドキュメンタリー映画と実験映画の境界を行く小田香作品。吉開菜央演じる非現実の存在(サンダル履きで洞窟に入っていくのも、エジプトやギリシアの女神にも似た存在だからだろうか)を導き手として、地下に埋もれた歴史と記憶の層をたどる。地下世界の壁面で光と影が戯れるさまは、まるで映画館の暗喩のようだ。ともすれば環境映像のように消費されかねないところを、ガマの出来事の証言と、姿を見せることのない米軍機の音が切り裂く。それがバランスを崩しているという向きもあるかもしれないが。
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評論家
上野昻志
暗闇に光が点滅する。通り過ぎる地下鉄の光が支柱に反射する。音が響く。地下道の壁に影が揺れ動く。その影に手が伸びる。女性の手が樹木に文字をなぞる。その手は鉢植えの枝を撫でる。壁面に刻まれた像をさする。その感触が、確かに伝わってくると覚えるのはなぜか。地下に印された痕跡とその記憶。それを探る彼女の旅は、沖縄のガマにも到り、鍋底に残る骨にも触れる。ガマの開いた口から見える海が美しい。光と影を捉える撮影はもとより、そこに谺する音響が素晴らしい!
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ
“風景”や“場”を映し出すドキュメンタリーが好きである。風景の下に在る想いや歴史の深さを覗き見ることで、自分の感情まで深化する瞬間が好きである。そして何より、地下世界が好きである。……以上の“癖(ヘキ)”を持っているものだから、本作とは生理感覚レベルで呼吸が合った。そんな感覚面のみならず、“シャドウ”と呼ぶには実存性が高いアバターを媒介にして歴史の流れに入り込んでいく、思索の旅としても刺激的。尺はまったく違う作品だが「占領都市」に近い感慨を味わえた。
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
ドキュメンタリー映画と実験映画の境界を行く小田香作品。吉開菜央演じる非現実の存在(サンダル履きで洞窟に入っていくのも、エジプトやギリシアの女神にも似た存在だからだろうか)を導き手として、地下に埋もれた歴史と記憶の層をたどる。地下世界の壁面で光と影が戯れるさまは、まるで映画館の暗喩のようだ。ともすれば環境映像のように消費されかねないところを、ガマの出来事の証言と、姿を見せることのない米軍機の音が切り裂く。それがバランスを崩しているという向きもあるかもしれないが。