エマニュエル(2024)の映画専門家レビュー一覧

エマニュエル(2024)

シルヴィア・クリステル主演の1974年の映画版も大ヒットしたエマニエル・アルサンの官能文学「エマニエル夫人」を原案に、新たな解釈で映画化。香港の高級ホテルの査察依頼を受けたエマニュエルは、ホテルに滞在しながらその裏側を調べ始めるが……。出演は「燃ゆる女の肖像」のノエミ・メルラン、「リアル・ペイン~心の旅~」のウィル・シャープ、「インファナル・アフェア」のアンソニー・ウォン、「インポッシブル」のナオミ・ワッツ。監督は、「あのこと」でヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝いたオードレイ・ディヴァン。2024年10月28日より開催の第37回東京国際映画祭(2024)企画「ガラ・セレクション」にてモ上映された。
  • 俳優

    小川あん

    なぜ、こういった類の映画は官能映画になりえないのだろう……。残念ながら、本作もラインから外れてしまっている。肝心なセクシャルシーンがゾクゾクしない、冷めてしまう。あまりにも、登場人物の役割がパキッとし過ぎている。ハイキャリアだけれど性を解放できない女性と、自由だけれど性欲が枯渇した男性。交わっても面白くはならない。性はもっと曖昧なものであるはずだ。結果、舞台である香港のラグジュアリーホテルの内情がめちゃくちゃ過ぎてそっちに気をとられた……。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    原作小説が大胆に脚色され、当然1974年版とはだいぶ違った内容に。性の冒険というよりは、資本による管理と操作のせいで見失ってしまった真の自分を取り戻そうとする物語という感じが強い。美しい撮影と美術で描かれる超高級ホテルのあれこれを、「一生縁がなさそうだなあ」と最初のほうこそ珍しく眺めるが、実はこのホテル自体が抑圧の象徴であり、ずっとホテルに閉じこめられていた主人公は、終盤ようやく外に出る。最初のチョイスだったというレア・セドゥが主演していたらどうなっていたのかな。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    「エマニエル夫人」を「あのこと」でヴェネチア金獅子賞受賞のオードレイ・ディヴァン監督が新たに映画化。主演は「燃ゆる女の肖像」「TAR/ター」のノエミ・メルランと聞くと期待したいが、結果は裏切られる。舞台を現代の香港の超高級ホテルにして、セリフもほぼ英語とアップデートを図ったが、元の「エマニエル夫人」が持っていた古き良きフランス臭さが薄まり、ただのソフト・ポルノに。女性目線のスタイリッシュな性描写を意図したのだろうが、映画史の性描写を更新する覚悟が足りない。

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