ストップモーションの映画専門家レビュー一覧
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映画監督
清原惟
偉大なアニメーション作家である母から解き放たれ、自分自身の作品に取り組む主人公。しかし制作はなかなか思うように進まず、彼女は狂気に呑まれていく。ここで思うのが、なぜいつも女性の表現者ばかりが狂気に呑まれていくのだろうか、ということ。これまで映画が内包してきたジェンダーバイアスへの批評性のなさが気になってしまう。本作におけるストップモーション・アニメは、グロテスクさを表現するいちアイテムでしかなく、そこにあまり世界観が感じられなかった点も残念だった。
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編集者、映画批評家
高崎俊夫
どこかヤン・シュヴァンクマイエルのシュールレアルな悪夢的な世界を彷彿させる作風だ。ヒロインがコマ撮りアニメーターというのが異色で、斯界の先達である毒母の抑圧に抗い、解放を希求するも錯乱へと誘われる恐怖譚としてはポランスキーの「反撥」(65)も連想させる。東欧的で陰鬱なフォークロアの世界とオブジェとしての人形が腐臭漂う肉塊と化してゆくプロセスを克明に描写する粘着性へのフェティッシュな感覚が結びつき、露悪的なまでにグロテスクでおぞましい世界が現出している。
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ
「才能の限界」「抑圧的な親子関係の葛藤」「表現と重なるトラウマ」「曖昧になっていく現実と妄想の境界線」……物語構成要素を挙げれば「ブラック・スワン」をはじめとした“芸術に殉じるアーティストを悲劇的に描いたサイコロジカルスリラー”のクリシェばかりで成り立っている本作。下手をすれば魂なき模造品になりかねないが、紋切り型もうまく扱えば勝利の方程式! 静=死に生を吹き込むストップモーションという素材の新鮮さ、そして監督の確かな才気が作品に血肉を通わせている。
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