逃走(2025)の映画専門家レビュー一覧

逃走(2025)

半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した東アジア反日武装戦線の元メンバー、桐島聡の闘いを描く社会派ドラマ。重要指名手配犯・桐島は、日雇い仕事を転々としながら逃亡を続けていた。2024年、70歳の桐島は末期がんと診断され、病院のベッドで生死の狭間を彷徨う。主人公・桐島を「罪の声」の古舘寛治、若い頃の桐島を「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の杉田雷麟が演じる。1960年代後半から70年代初頭に若松孝二作品の脚本を量産、その後、日本赤軍に身を投じ、27年間日本を離れて帰国、活動を再開した「REVOLUTION+1」の足立正生監督が自らの半生と重ね合わせ、桐島の苦悩と決意を描き出す。
  • 評論家

    上野昻志

    桐島聡とは誰か? 1974?75年に三菱重工本社ビルの爆破をはじめ、企業を連続爆破した東アジア反日武装戦線内のさそりのメンバーで、他グループを含め大半が逮捕されたなかで、ただ1人、逃げおおせた男だ。本作は、山中で、爆弾の威力を確かめる若き日の桐島たちの行動から始まるが、主題は、他人になりすまして官憲の手を逃れた桐島の49年間を問うところにある。自問自答を繰り返す桐島を演じた古寛治がいい。そこから、彼にとっての逃走が闘争であったことが浮かび上がる。

  • リモートワーカー型物書き

    キシオカタカシ

    多くを語らず死去した桐島聡本人の内心は想像しかできず、どのようにも創造し直すことができる空白のキャンバスである。ここでその“空白”に注入されているのは監督の半生……本作は桐島聡の伝記である以上に足立正生の半自伝と言えるだろう。オリヴァー・ストーンが乱発していたような“他人の人生をハイジャックした実質的自伝映画”は時に問題を孕む。しかしこの余人に作れない作家性の煮凝り・総決算には、かつて若松プロの映画にハマっていた内なる大学生が拍手喝采させられた。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    桐島聡の逃走=闘争=労働の日々。熱い思いを描きながらも、形式とスタイルは意外にクール。1970年代に存在していた物品だけをそろえて時代を再現するのは難しかったように見える前半部には、演劇的な抽象性の面白さがある。若き日の桐島は、日雇い仕事をしながら現実社会のシステムを学んでいるかのようだ。古寛治に交代してからの壮年以後の彼は、社会の激変に立ち会いつつ、自己批判と内省を繰り返す。現実とも幻覚とも知れぬシーンとの交錯により、抽象的な前半とのトーンの整合性も保たれる。

  • 評論家

    上野昻志

    桐島聡とは誰か? 1974?75年に三菱重工本社ビルの爆破をはじめ、企業を連続爆破した東アジア反日武装戦線内のさそりのメンバーで、他グループを含め大半が逮捕されたなかで、ただ1人、逃げおおせた男だ。本作は、山中で、爆弾の威力を確かめる若き日の桐島たちの行動から始まるが、主題は、他人になりすまして官憲の手を逃れた桐島の49年間を問うところにある。自問自答を繰り返す桐島を演じた古寛治がいい。そこから、彼にとっての逃走が闘争であったことが浮かび上がる。

  • リモートワーカー型物書き

    キシオカタカシ

    多くを語らず死去した桐島聡本人の内心は想像しかできず、どのようにも創造し直すことができる空白のキャンバスである。ここでその“空白”に注入されているのは監督の半生……本作は桐島聡の伝記である以上に足立正生の半自伝と言えるだろう。オリヴァー・ストーンが乱発していたような“他人の人生をハイジャックした実質的自伝映画”は時に問題を孕む。しかしこの余人に作れない作家性の煮凝り・総決算には、かつて若松プロの映画にハマっていた内なる大学生が拍手喝采させられた。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    桐島聡の逃走=闘争=労働の日々。熱い思いを描きながらも、形式とスタイルは意外にクール。1970年代に存在していた物品だけをそろえて時代を再現するのは難しかったように見える前半部には、演劇的な抽象性の面白さがある。若き日の桐島は、日雇い仕事をしながら現実社会のシステムを学んでいるかのようだ。古寛治に交代してからの壮年以後の彼は、社会の激変に立ち会いつつ、自己批判と内省を繰り返す。現実とも幻覚とも知れぬシーンとの交錯により、抽象的な前半とのトーンの整合性も保たれる。

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