太陽(ティダ)の運命の映画専門家レビュー一覧

太陽(ティダ)の運命

佐古忠彦が、「米軍が最も恐れた男」2部作、「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」に続き、沖縄現代史に切り込んだドキュメンタリー。政治的立場は正反対ながら、国と激しく対峙した沖縄県知事、大田昌秀と翁長雄志。二人は何を目指し、何と闘ったのか。
  • 評論家

    上野昻志 |太陽<ティダ>の運命

    沖縄の歴史を、政界の動向を中心に描いているが、それは同時に、日本への問いかけになる。興味深いのは、第4代沖縄県知事の大田昌秀と第7代知事の翁長雄志の関係だ。両者は、政治的な立場が違い、保守系の翁長は、太田を知事の座から引き下ろす。だが、知事となってからの翁長は、かつての太田と同様に沖縄の基地撤去のために奔走し、太田と同じ道を歩むようになる。沖縄の自治を求めて。だが、日本政府は受け付けない。そこから浮かび上がるのは、沖縄の自治を認めない日本に自治はあるのか、という問いだ。

  • リモートワーカー型物書き

    キシオカタカシ |太陽<ティダ>の運命

    沖縄に背負わされた問題を題材にした映画はこれまでにも作られてきたが、それらを自身の日常とは連続性のない“非日常”と捉えるマインドセットを自分も含めた日本人の多くが内面化している――エキゾチシズムを投影して諸問題から目を逸らし透明化した “沖縄プロイテーション”と言うべき言説や作品が外様視点から発信されているのはその証左だろう。対照的ながら同じ道を辿った二人の首長を軸にした本作は沖縄の“日常”を振り返る平成史でもあり、傲慢な無関心を突き崩す力を持つ。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子 |太陽<ティダ>の運命

    TV局制作の映画については日頃いろいろ言われるが、これはまさにTV局だからこそ作ることができた作品かもしれない。大田昌秀のジレンマには見ているこちらまで苦しくて吐きそうになるし、沖縄差別が21世紀に入ってむき出しになってくるようであるのがさらに苦しくさせる。大田昌秀と翁長雄志を軸にしてまとめたのが秀逸で、因縁に結ばれつつ、まったくの対極のような存在だった二人がやがて重なり合っていく展開には、感動して済ませていい題材じゃないのに、言い知れぬ感動さえ胸にせまってくる。

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