私たちは天国には行けないけど、愛することはできるの映画専門家レビュー一覧
私たちは天国には行けないけど、愛することはできる
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映画評論家
川口敦子
ポケット・ベル、公衆電話、「好き」を伝える手書きの手紙。アナログな光景が「世界の終わり」を待つ1999年、少女の夏を息づかせる。カラオケの時間、くぎ付けになってしまうひとりへの想いが、くぎ付けの視線を浴びるひとりにも伝わって解ける初恋、そのときめき。それが同性への気持ちであってもそこに逡巡はない。そんな青春の物語のみずみずしさに世紀末韓国高校スポーツ界に巣食う暴力、腐敗を突くサブプロットのどす黒さが食い込んで虻蜂取らずの印象に堕すのが惜しい。
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批評家
佐々木敦
「はちどり」「イカゲーム」という大ヒット作の脇役だった二人の主演女優は良いし、テコンドーという道具立ても意外性があるのだが、うーむ、作劇的に見ると紋切型と御都合主義が否めないのじゃないかなあ。少女同士の恋愛を中心に置いて、権力勾配やいじめや格差や偏見などといったテーマを縦横に配しているのだが、結果としてどれも掘り下げがいまいち足らないように感じてしまった。タイ映画の佳作「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」も1999年を描いていたが、何かあるの?
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ノンフィクション作家
谷岡雅樹
テコンドーの指導者により、選手たちは虐待されている。5日間で6キロ増やせ。八百長しろ。性加害まで受ける。親は、不正を見逃しお金を貰えという。弱い立場の者は我慢して権力者には屈しなければいけないのか。これを対岸の火事と笑い、無関係と非難できるのか。主人公の前に現れるのは天使であり異物のような救世主だ。だが、より深い現実に絶望している。今度は、主人公が天使となる番だ。悪はそれ自体でこちらの世界の愛を汚すことはできない。殻を破り、日常に裏打ちされた心は、汚されようがない。
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映画評論家
川口敦子
ポケット・ベル、公衆電話、「好き」を伝える手書きの手紙。アナログな光景が「世界の終わり」を待つ1999年、少女の夏を息づかせる。カラオケの時間、くぎ付けになってしまうひとりへの想いが、くぎ付けの視線を浴びるひとりにも伝わって解ける初恋、そのときめき。それが同性への気持ちであってもそこに逡巡はない。そんな青春の物語のみずみずしさに世紀末韓国高校スポーツ界に巣食う暴力、腐敗を突くサブプロットのどす黒さが食い込んで虻蜂取らずの印象に堕すのが惜しい。
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批評家
佐々木敦
「はちどり」「イカゲーム」という大ヒット作の脇役だった二人の主演女優は良いし、テコンドーという道具立ても意外性があるのだが、うーむ、作劇的に見ると紋切型と御都合主義が否めないのじゃないかなあ。少女同士の恋愛を中心に置いて、権力勾配やいじめや格差や偏見などといったテーマを縦横に配しているのだが、結果としてどれも掘り下げがいまいち足らないように感じてしまった。タイ映画の佳作「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」も1999年を描いていたが、何かあるの?
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ノンフィクション作家
谷岡雅樹
テコンドーの指導者により、選手たちは虐待されている。5日間で6キロ増やせ。八百長しろ。性加害まで受ける。親は、不正を見逃しお金を貰えという。弱い立場の者は我慢して権力者には屈しなければいけないのか。これを対岸の火事と笑い、無関係と非難できるのか。主人公の前に現れるのは天使であり異物のような救世主だ。だが、より深い現実に絶望している。今度は、主人公が天使となる番だ。悪はそれ自体でこちらの世界の愛を汚すことはできない。殻を破り、日常に裏打ちされた心は、汚されようがない。