壊れた心の映画専門家レビュー一覧
壊れた心
フィリピンの鬼才ケヴィン・デ・ラ・クルスが監督・脚本・音楽を担当し、「淵に立つ」の浅野忠信が主演したラブストーリー。マニラのスラム街を舞台に、冷酷な殺し屋と娼婦の破滅的な逃避行を描く。第27回東京国際映画祭コンペティション部門正式出品作品。出演は、「闇のあとの光」のナタリア・アセベド。撮影監督はクリストファー・ドイル。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
地元マフィアが支配するマニラのスラム街深くに分け入り、路地のガラクタやジメッとした路面の汚水などあらゆる映画的契機が転がっている。だが映画がかなり進行してもなかなかまともな台詞一つ聴けず、こちらは勝手にイメージ先行の作品なんだと決めつけて見てしまう。詩人であり音楽家でもある一九七三年生まれの監督はその多才さを発揮したが、上滑りの感もあり。また撮影の名手クリストファー・ドイルには、良いドイルと悪いドイルがある。本作の撮影は後者だろう。
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脚本家
北里宇一郎
殺し屋がいて娼婦の恋人がいてカリスマ的ボスがいて――と設定は暗黒街物のパターンを踏んでいる。が、物語らしきものはない。最初はこういうイメージ優先の作品もあっていいかと無心に眺めていたけど、結局はミュージック・クリップの連なりみたいな映画で。この監督さん、気持ちよかったろうなあ。好き放題やって。最近貫祿がついた浅野忠信とC・ドイルがいなきゃ、単なるプライベート・シネマと見紛うかも。ま、アレンジを変えて繰り返し流されるテーマ・ソングは耳に残ったけどネ。
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映画ライター
中西愛子
フィリピンの監督ケヴィン・デ・ラ・クルスが、浅野忠信を主演にマニラで撮った作品。殺し屋と組織の女の逃避行と思しき展開だが、セリフはないし、ストーリーもあるようでない。実験映画と言っていい。全篇に流れる音楽は心地よく、世界観をしっかり作っている。また映像もユニークなのだけど、撮影監督はクリストファー・ドイルなわけで。監督、ちょっとドイルに頼りすぎではないか。資料によると、台本もないとのこと。ベテラン監督なのだし、もう少し洗練さがあっていいような。
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