もしも建物が話せたらの映画専門家レビュー一覧

もしも建物が話せたら

    「もしも建物が話せたら、彼らは何を語るだろう?」というテーマで6人の名だたる監督たちが、ヴィム・ヴェンダースのもとに集結。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を執り、ヴェンダース、「ランナウェイ 逃亡者」のロバート・レッドフォードなど6人の映画監督が思い入れのある建築物の心の声を映像化したドキュメンタリー。第64回ベルリン国際映画祭ワールドプレミア上映、第27回東京国際映画祭特別招待作品として、2014年10月26日より上映された。
    • 翻訳家

      篠儀直子

      6人の監督のアプローチはさまざまで、観れば必ずお気に入りのパートがあるかと。ベルリン・フィルハーモニーを取り上げ、都市の文化と歴史、建築家の人生、建物のコンセプトを重ね合わせたヴィム・ヴェンダースのパートは模範的な仕上がり。マイケル・マドセンの撮るハルデン刑務所は監視の力学と内部の暮らしを鮮やかに浮かび上がらせ、「バレエボーイズ」にも登場した美しい建造物、オスロ・オペラハウスのパート(マルグレート・オリン監督)は、バックステージ物のような面白さ。

    • ライター

      平田裕介

      どの建物も、なにかしら名を耳にし、姿を目にしたことがあるものばかり。だからこそ、建造物自身の目線と言葉で、歴史や存在意義を伝えるのはユニークだし、監督各々の手腕も如実に反映されていて楽しめる。だが、そうなってくると一篇約25分なのが物足りなく感じ、一棟にじっくりと迫った連作にしたほうが良かったのでは思ってしまう罪な作品。なぜかレッドフォードだけがコンセプトを無視し、建物に関わる人々に語らせている。もしも誰かが彼と話せたら、そこを注意してほしい。

    • TVプロデューサー

      山口剛

      優れた建築家は常にユートピアの創造を目指すのだろうか? 6人の監督が描く6つの建物にはどれもそんな志が覗える。マイケル・マドセンの撮るハルデン刑務所は懲罰の場所と云うよりはまさにユートピアだ。自宅を自慢する如くカメラに向って思わず笑みを見せる受刑者の顔は忘れがたい。ベルリン・フィルハーモニーのホールに守護神の如く現れる建築家の亡霊はまさにヴェンダースの映画だ。3時間近いドキュメンタリーだが、それぞれの監督の個性が興味深くいつしか時間を忘れる。

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