家族はつらいよの映画専門家レビュー一覧

家族はつらいよ

「東京家族」の出演者8人が再結集し“新たなる一家”の物語を紡ぎ出す山田洋次監督作。結婚50年を迎えようとする周造と富子。そんな二人に持ち上がった離婚騒動を契機に開かれた家族会議で子供たちの不満が噴出、さらなる騒動が巻き起こる。橋爪功と吉行和子が離婚危機に瀕する熟年夫婦を演じ、長男夫婦に西村雅彦と夏川結衣、長女夫婦に中嶋朋子と林家正蔵、次男カップルに妻夫木聡と蒼井優が扮する。「男はつらいよ」シリーズ終了から約20年ぶりに手掛けた山田洋次の喜劇作品。
  • 評論家

    上野昻志

    なんとまあ、饒舌な映画でしょう! 初めの電話からゴルフ場、飲み屋と、まあ、よく喋ること。蒼井優が、最後に「言葉です」というが、これは、どうでもいいことばかり喋らず、大切なことを言えという教訓だろうか? ともあれ、この饒舌は、寡黙な小津映画の対極にあるというしかない。だが、それにしても、小林稔侍の探偵が、調査対象の橋爪功の名前も写真も見ているはずなのに、相手が高校時代のテニス部でダブルスを組んだこともある男だと気づいていないのが、なんとも不思議だ。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    「東京家族」のパラレルワールド。同じキャストで喜劇で、という企画の発端が面白い。たしかに「東京家族」はほとんど山田洋次調喜劇になるところを堪えて、渋い映画にしているようなところがあった。本作のほうが、小津の呪縛があった「東京家族」より良いかも。二本立てで二段階で「東京物語」とバトったのか。あと「男はつらいよ」のシリーズ後ろのほう、“九十年代寅さん”で、吉岡秀隆の存在感が増していたときにありうる感じがした家族の映画、それがいまやっと現れている。

  • 文筆業

    八幡橙

    びくりとも揺るぎようのない、さすがの安定感。一人一人の個性際立つ“家族”という名のアンサンブル。不協和音奏で始める平田家の騒動を、徹頭徹尾前のめりで我がことのように見つめてしまったのは、実家の老いた両親が、映画の舞台のごく近隣で兄の一家と三世代同居しているためなのか。蒼井優のちょっとした表情にもグッときたが、「東京家族」とはまったく違う父親像を顔芸を駆使して熱演する橋爪功に脱帽。笑った後、家族のありがたさにちょっとしんみり。久々に“映画”を観た思い。

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