知らない、ふたりの映画専門家レビュー一覧

知らない、ふたり

「サッドティー」に続いて今泉力哉監督が今を生きる男女の等身大の恋愛模様を綴る群像劇。人との接点を避ける靴職人見習いの韓国人青年や彼に思いを寄せる日本人女性ら互いの胸の内を知らないまますれ違う7人を通し、恋愛の本質に迫る。韓国の男性ヴォーカルグループ『NU’EST』(ニューイースト)からレン、ミンヒョン、JRが参加。ほか、ファッションモデルの青柳文子、「ペタル ダンス」の韓英恵、「福福荘の福ちゃん」の芹澤興人、「想いのこし」の木南晴夏らが出演。
  • 映画評論家

    上島春彦

    韓ちゃんと言えば「ピストルオペラ」の生首デビューで有名だが着実に成長しているねえ。彼女にキスした若者はそれだけで別れたのに、彼女は「長く話した気がする」とぽつんともらしていて、何かヘンだなと思ったのだがラストシチュエーションにその齟齬が効いてくる。時間が行ったり来たりして、最初は説明的すぎるように見えたのだが、繰り返されるうちに完全に監督の術中にはまってしまった。ただ物語の時制を整理していくとクライマックスの事件は中盤で起きているのがヘンかも。

  • 映画評論家

    北川れい子

    韓国のアイドル・グループ“N’UEST”と言われても、こちらにはまったく“知らない、人たち”。そんな彼らを、あえて目立たない役で日常の中に置き、さりげなく目立たせるという狙いは面白いと思うが、行きずりとか、すれ違いとか、場面はあってもドラマがなく、さしずめ群像スケッチでも観ているよう。靴職人役の金髪美青年など、何で心を閉ざしているのかポーズだけの印象も。そうか、等身大というのは、自分を持て余していることなのか。韓英恵だけはリアルに頑張っているが。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    「サッドティー」で実証済みの群像劇に抜群の才を見せる今泉力哉だけに、透明感のある映像と共に国籍も言葉の壁もすり抜けて、二人組たちのすれ違いと邂逅を味わい深く映し出す。閉じた狭い世界を描きながら視点は広く深い。日本映画に韓国人が登場すると〈気を遣う〉か、アケスケになりがちだが、コンビニや職場にいる隣人として捉えたフラットな視点を堪能。韓国イケメン歌手を使っても淡々とした作劇が揺るがず感心したが、韓英恵が双方を接続する存在として放つ魅力が忘れ難い。

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