パディントンの映画専門家レビュー一覧
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翻訳家
篠儀直子
完璧なファミリー・ムービーであると同時に、英国コメディの輝かしい伝統を受け継ぐ作品。さまざまな映画を想起させる細部も、映画好きにはたまらない。一方、19世紀から20世紀にかけて、南北米大陸やオセアニアなどから原住民が「標本」として欧州へ連れて来られていた事実を踏まえたかのようなくだりもあり、住処を失くしてロンドンへやって来るパディントンは難民のようでもあるのだから、この映画全体は、多様性を包摂する(理念としての)ロンドンへの、見事な讃歌になっている。
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ライター
平田裕介
CG製パディントンが、濃厚獣臭が立ち上ってきそうなほどガチに熊。が、そんな容姿と吹き替えを務めたB・ウィショーの朴訥口調&礼儀正しき言葉遣いのギャップにキュンとなり、いつしか彼の虜に。ペルーからの来訪熊が文化摩擦を起こしながらも一家に受け入れられる物語も、伝統と歴史の街にして移民の街でもあるロンドンに相応しくて◎。ニコマンが「ミッション:インポッシブル」の元夫トムクルよろしく宙吊りスタントをこなし、同作テーマ曲もバッチリかかるのだが、何故に?
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TVプロデューサー
山口剛
パディントン君は誰にも愛される素直でやさしい熊ちゃんだ。彼がくりひろげる大冒険の数々は、大人も子供も楽しませるイギリス児童文学の伝統の産物だろう。大地震を生きのび、暗黒大陸から、「この熊をよろしく」という札を首に下げてロンドンへやってきたパディントンの姿に、移民問題を重ね合せることは容易だ。当初、排除しようとするリスク管理を専門とする主人が、やがて命がけで一匹の熊の命を守ろうとする姿は素直に感動を呼ぶ。脚本監督のポール・キングの手腕は見事。
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