ハッピーアワーの映画専門家レビュー一覧

ハッピーアワー

30代後半を迎え人生の岐路に立つ女性4人の心情を掬い取るヒューマンドラマ。主演4人は演技未経験ながら第68回ロカルノ国際映画祭最優秀女優賞を受賞。同映画祭脚本スペシャル・メンションにも輝いた。監督は「親密さ」の濱口竜介。市民参加の『即興演技ワークショップ in Kobe』から生まれた。蜷川幸雄演出作品など数々の舞台、テレビ番組を担当してきた阿部海太郎が音楽を手がける。2015年12月5日より神戸・元町映画館にて先行公開。
  • 映画評論家

    上島春彦

    彼女たち四人はもの欲しげに幸せを求めているのではない、とは思うが、基本これは幸せなんか求めるヤツには地獄が待っている、というコンセプト。それを自覚したり、あるいは体験したりするのが、実は「振りまわされる」男たちの方だというのも興味深い。路上で泣き崩れる人の姿を見て、いたたまれない気分になってしまった。話が脇にそれるが、人生の本当の智者はちょっとしか出てこないお姑さんなのに、その知恵を若夫婦はきちんと受け止めようとはしていないようだ。勿体ないねえ。

  • 映画評論家

    北川れい子

    確かに30代後半の女性は、家庭があっても独身でも何かと生きづらい。いやそれを言えば、世代や性別に関係なく、誰もがどこかで無理しているのが現代人だと思う。そんな女性グループに焦点を当て、虚実皮膜ふうにたっぷり時間を費やした本作、演じる彼女たちの自然体の言動は実に大したものだと思う。けれどその言動の一方的な被害者ぶりや弁護人気どりは鼻持ちならない。彼女たちが連れ立って参加するさまざまなワークショップの場面もムダに長く、こっちの時間のことも考えてよ。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    土着でも旅行者でもない長期逗留者的視点とでも言おうか、こんな神戸を映画で見たのは初めてだ。ワークショップや打ち上げ、朗読会のシーンになるとドキュメンタリー的に長々と撮られるが、客席とスクリーンに流れる時間が均等化され、映画の中に引きこまれそうになる。新緑の山から心地良い風が街に吹き込み、ぶっきらぼうな彼女たちの演技がみるみる輝く前半に惹かれる。助手席の女性が降りた後の座席を映し続けるだけで残存感に胸が締め付けられる映画が今、他にあるだろうか。

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