われらが背きし者の映画専門家レビュー一覧
われらが背きし者
ジョン・ル・カレの同名スパイ小説をユアン・マクレガー主演で映画化。英国人大学教授ペリーと妻ゲイルは、休暇中のモロッコで偶然知り合った男からUSBをMI6(イギリス秘密情報部)に渡してほしいと頼まれたことを機に、国家を揺るがす大事件に巻き込まれてゆく。共演は「ニンフォマニアック」のステラン・スカルスガルド、「ロンドン・ヒート」のダミアン・ルイス、「007 スペクター」のナオミ・ハリス。監督は「ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ」のスザンナ・ホワイト。脚色を「ドライヴ」のホセイン・アミニが務める。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
ロシアマフィアのマネーロンダリングをテーマに世界各地でロケしたスパイアクションだが、この映画は主人公夫婦の倦怠と不和が前提となっている点が興味深い。大スケールの亡命劇と一夫婦の問題が(等価とまでは言わないが)二重のサスペンスを織りなす、そのサイズの大小を無化する対称性こそ、映画というものの魅力ではないか。「ラッシュ」「白鯨との闘い」などロン・ハワード監督の近作で撮影を担当したアンソニー・ドッド・マントルが再び切れ味鋭いカメラワークを見せる。
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脚本家
北里宇一郎
ル・カレ映画に駄作なし。おまけに今回は原作者が製作も兼ねてというので期待したが。小説の方は現況のスパイ活動を反映してあまり意気があがらず、中程度の面白さ。それを脚本は、活劇的趣向を盛り込んだりして映画的にまとめ、結末など上手く納めている。が、巻き込まれ型サスペンスに徹すればもっとスッキリしたんじゃないかとも。演出に味がなく、雰囲気描写が弱いのが残念。お話のキー・パーソンとなるスカルスガルドが相変わらずの好演。マクレガー君に元気がないのが気になる。
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映画ライター
中西愛子
ジョン・ル・カレのスパイ小説を映画化したエンタテインメント。ごく普通のイギリス人大学教授と弁護士の妻。倦怠期夫婦が外国旅行先で危険な亡命劇に巻き込まれる。巻き込まれキャラとして申し分ないユアン・マクレガーが、期待通りに人のよさにつけこまれて翻弄される。そんなユアンと優秀な妻ナオミ・ハリスのバランスがよく、安定した出来栄えなのだけど、家族というテーマ性が強すぎて、スパイ映画としてはややぬるいような。それも現代的なのだととれば、ある意味、斬新。
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