桜ノ雨の映画専門家レビュー一覧

桜ノ雨

音声合成ソフトを使用した楽曲から人気を博し、ミリオンヒットを記録した歌をモチーフにした青春群像劇。作詞・作曲のhalyosyが原作・原案を手がけた小説を下敷きに、悩みながらも前に進んでいく合唱部の高校生員たちを活写する。合唱コンクールで金賞を獲るために、部長が作った楽曲ではなく難度の高い曲を歌うことになり、部員たちの間に不協和音が響く……。監督は「リュウグウノツカイ」で第24回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭北海道知事賞を受賞したウエダアツシ。「映画 暗殺教室」の山本舞香、「悪の教典」の浅香航大らが出演。劇場公開に先駆け、第28回東京国際映画祭パノラマ部門にて上映された。
  • 評論家

    上野昻志

    前にも高校生の合唱コンクールを主題にした映画があったが、合唱コンクールって、そんなに人気があるのかね? ま、当方としては、高校生の恋愛話よりは素直に入っていけるが(苦笑)。もっとも、同じ合唱部の話でも、こちらは、コンクールで金賞を狙うことより、楽しく歌うことのほうが大事、というのが物語の核になっている。ただ、主人公が内気で自分の気持を率直に表せないという設定のためか、演じる山本舞香の無言のアップが長い気がするが、あまり表情を作らないのはいい。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    歌が先にありきで映画がつくられたとはおもしろい。石原裕次郎の映画みたい。「銀座の恋の物語」とか「赤いハンカチ」のような。それよりもう少し旧い時代の歌謡映画のようでもある。つい先頃も「風に立つライオン」があった。と、いう程度の人間にとってこの映画、というかプロジェクトはすごすぎる。もともとは音声合成歌唱ソフトのために想像されたバックストーリーだとは。想像外からの企画、発想だ。いやそもそも知らないんですがね。新作紹介からの引退を考えてます。

  • 文筆業

    八幡橙

    卒業ソングブーム(!?)とやらで、本作もまずボカロで火が付いた楽曲ありき。ゆえに、最初から概ね予想できるオチへと向かってゆくのだが、ラストの歌で感動の針が振りきれるはず、と観る者を構えさせる分、ハードルが高くなりすぎた気も。言いたいことを口にできないヒロインを中心に、10代の片思いやすれ違いが、昭和的な郷愁たっぷりに綴られ、“合唱”も正当に生かされている。もう少し一人一人にとって〈桜ノ雨〉がいかに大切な曲かを丁寧に描いていたら、圧巻のラストになったのでは。

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