桜ノ雨の映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
前にも高校生の合唱コンクールを主題にした映画があったが、合唱コンクールって、そんなに人気があるのかね? ま、当方としては、高校生の恋愛話よりは素直に入っていけるが(苦笑)。もっとも、同じ合唱部の話でも、こちらは、コンクールで金賞を狙うことより、楽しく歌うことのほうが大事、というのが物語の核になっている。ただ、主人公が内気で自分の気持を率直に表せないという設定のためか、演じる山本舞香の無言のアップが長い気がするが、あまり表情を作らないのはいい。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
歌が先にありきで映画がつくられたとはおもしろい。石原裕次郎の映画みたい。「銀座の恋の物語」とか「赤いハンカチ」のような。それよりもう少し旧い時代の歌謡映画のようでもある。つい先頃も「風に立つライオン」があった。と、いう程度の人間にとってこの映画、というかプロジェクトはすごすぎる。もともとは音声合成歌唱ソフトのために想像されたバックストーリーだとは。想像外からの企画、発想だ。いやそもそも知らないんですがね。新作紹介からの引退を考えてます。
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文筆業
八幡橙
卒業ソングブーム(!?)とやらで、本作もまずボカロで火が付いた楽曲ありき。ゆえに、最初から概ね予想できるオチへと向かってゆくのだが、ラストの歌で感動の針が振りきれるはず、と観る者を構えさせる分、ハードルが高くなりすぎた気も。言いたいことを口にできないヒロインを中心に、10代の片思いやすれ違いが、昭和的な郷愁たっぷりに綴られ、“合唱”も正当に生かされている。もう少し一人一人にとって〈桜ノ雨〉がいかに大切な曲かを丁寧に描いていたら、圧巻のラストになったのでは。
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