女が眠る時の映画専門家レビュー一覧

女が眠る時

「スモーク」でベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いたウェイン・ワン監督が、スペイン人作家ハビエル・マリアスの短編小説を日本人キャストで映画化。妻とリゾートホテルを訪れた作家が、そこで出会った謎めいたカップルに魅入られて行く。出演は「劇場版MOZU」のビートたけし、西島秀俊、「海難1890」の忽那汐里、「鍵泥棒のメソッド」の小山田サユリ。
  • 映画・漫画評論家

    小野耕世

    「スモーク」で私をとりこにしたW・ワン監督は、何年も前にマカオに住む私の友人のロシア人の画家を訪ね、彼の絵に触発された映画を撮ろうと考えた時期がある。それはまだ実現していないが、日本のリゾート地を舞台にしたこの作品は、プールサイドに並ぶ男と女の姿を示すところから、妄想とも現実ともつかない洗練されたミステリー世界に観る者をひきこんでしまう。男の視線で語られているようで、実はすべてが女性の視線に奪われていたのでは。とりわけ女性描写がすばらしい。

  • 映画ライター

    中西愛子

    西島秀俊演じる作家は、「アンジェリカの微笑み」の、ファインダー越しに横たわる美女に魅入られた写真家のように、内省的な迷宮に誘われるも、最後は正反対のところに着地する(が、どちらもハッピーエンド)、とは私の一解釈。少し遠くから、薄い皮膜を通して見える世界のなんと官能的なことか。覗きの死臭。この危険な快楽を、確信犯的に、知的なゲームとして楽しみたい大人のためのアート映画。カメラの中の眠る女を、慈しんで見つめるビートたけしの佇まいと表情が新鮮だった。

  • 映画批評

    荻野亮

    サッパリよくわからなかったのだが、眠っていたのはスクリーン上の女であって評者ではない。俳優たちのアンサンブルのよさが出る前に上映時間を使い果たしており、エロくもフェチくもなければ、狂気など小指の爪ほども感じない。ひんやりとした剃刀でおくれ毛を剃られる忽那汐里のうなじ、だけがややよかった。西島秀俊はむしろ欲望を欠いた人物を演じたときにもっともすばらしい瞬間があると思う。書けない作家と撮り続ける男の話だったら、同じ監督の「スモーク」のほうが断然よい。

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