追憶の森の映画専門家レビュー一覧
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映画・漫画評論家
小野耕世
「富士山の樹海は最良の死に場所」として海外で紹介されているとこの映画で初めて知った。死ぬためにアメリカからやってきた男が、樹海でさまよっている英語をしゃべる日本人の渡辺謙に出会って……という映画。ふたりの自殺志向の理由など次第に明らかになるが、やや思わせぶりすぎて、そうしたミステリアスな部分よりも、樹海では毎年何人の使者が出るのか、人命救助のシステムがどうなっているのかといった具体的な描写の部分のほうが私には興味深い。思い入れの描写がやや長すぎる。
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映画ライター
中西愛子
映画の舞台を、自殺の名所とも言われる富士の樹海にする必要はあったのだろうか。窮地に陥った男の内面的な煉獄の世界とか、あるいは単純に人里離れた森のような架空の場所ならば、男の再生の物語として楽しめたかもしれない。が、自ら飛び込んだ無念の魂さまよう場所を背景に、“生き延びた、ラッキー!”さながら高揚しゲームオーバーする主人公を好きになれない。もっと違う感謝の仕方はないのか。“浮かれるな”と、「マネー・ショート」のブラピじゃないけど言いたくなる。
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映画批評
萩野亮
ガス・ヴァン・サントはもともとカルトな趣向のある監督で、たまに変なものを撮ってくれてうれしいのだけど、この作品は一見そっち方面に見せかけたヒューマンドラマ。誰もがマコナヘイに思う、YOUはどうして日本へ? という疑問がいっこうに解決されないご都合主義的な脚本に、映画そのものが樹海のようでたいへん苦しい。こわれゆくナオミ・ワッツがすごくうまいのだけど、ダンナが非常勤講師になって収入が減る、というあまりにも切実なリアリティーに個人的に胸が痛んだ。
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