探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海の映画専門家レビュー一覧
探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海
島田荘司の長編ミステリーを「相棒」シリーズの和泉聖治監督が映画化。瀬戸内海の小島に男の死体が半年に6体流れ着く。編集者から“死体島”の話を聞き、事件に興味を持った脳科学者の御手洗潔は6体が広島県福山市から流れ着いたことを突き止める。出演は「幕末高校生」の玉木宏、「銀の匙 Silver Spoon」の広瀬アリス、「くちびるに歌を」の石田ひかり、「Mr.マックスマン」の要潤、「罪の余白」の谷村美月、「キッズ・リターン 再会の時」の小倉久寛、「春を背負って」の吉田栄作。音楽を「愛を積むひと」の岩代太郎が担当する。
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映画評論家
北川れい子
いくつもの変死体や不可解な状況での無惨な家族皆殺し事件など、横溝世界を思わせるおどろおどろしい事件が次々と発生、さらに地理や伝説、古文書まで関係してきて、何やら死体と謎の大盤振舞もかくや。けれどもその大盤振舞が、全て映画の中だけに止まっていて、観ているこちらは謎さえ共有できない、いや共有する気にもなれないのは脚本があまりにも独りよがりだからだ。謎のための謎、仕掛けのための仕掛けでは事件の流れ作業と同じ。ロケその他、大作ふうなのにもったいない。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
博物館職員の地味~な男が、近年のハードなバットマンの如き秘密兵器で瀬戸内海を高速航行する姿に意味不明の感動をおぼえた。私は生半可なシャーロッキアンだが、読者や観客の追随を許さず、共に事態を追わず、謎解きがフェアかアンフェアかなどと端から言わせもしない、ホームズ型の超推理者(本作の主人公御手洗潔もその眷族)こそ、ミステリ性が物語の口実であることを暴露する真のヒーローではないかと思う。面白く観た。悪を外国人にばかり押し付ける構成、描写は×。
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映画評論家
松崎健夫
世の中には不思議な出来事がある、しかし同時に、世の中には説明できない不思議もない、と謎を解明する御手洗潔。映画冒頭では、雨の降るショットを俯瞰で撮影しているが、それによって「雨」=「視界不良」=「謎」+「俯瞰」=「全体像」=「御手洗潔による考察のメカニズム」を視覚化してみせているのも一興。玉木宏は2015年のドラマ版に続いて御手洗潔を演じているが、ジャンル映画的なシリーズ物が不在の邦画界にとって、新たな鉱脈となる可能性を秘めている。
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