つむぐものの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
上島春彦
今回のは四本全部いいが、これは物語構築のハードルが高過ぎて多少失敗しており星は減らさざるを得ない。でも見どころは多く必見作。善意の固まりではあるが無能ぞろいの日本人達を一人の韓国人少女が天然のパワーで圧して、全て最後は上手くいくという「いい話」でよかったのに。それを微妙なところで避けたため、和紙職人の息子夫婦ととりわけ孫の極悪ぶりが際立つ結果となっている。笑顔だけが取り柄の無能な日本人、吉岡里帆の意識改革には成功したわけだからそれで十分なのか。
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映画評論家
北川れい子
乱暴でふてくされたキム・コッピの描写からスタートするせいか、彼女を狂言回しにした日本の高齢者介護と越前和紙のアピール映画の印象が。むろん、介護する側にも、される側にもそれぞれの人生があるのだから、頑固な和紙職人の介護をすることになるキム・コッピ側から描いても決して不自然ではないが、一石三鳥狙いとでも言うか、妙に情緒的八方美人映画で終わっているような。ことばが通じないキム・コッピが、ほとんど研修も受けずに介護の現場に就くというのもいささか乱暴。
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映画評論家
モルモット吉田
石倉三郎が絶品。こんな抑制された繊細な演技を見せてくれるとは思わなかったと言えば失礼だが、「岸辺の旅」の小松政夫と同じく、喜劇も悲劇も大仰なものから背中と無表情で語る芝居まで何でも出来る俳優なのだ。つまらなさそうに飯を食い、黙々と作業する顔など石倉の年輪が映画を豊かにさせる。言葉も通じないキム・コッピに与える仕事が問題になりそうなぐらい理不尽なのは置くとして、石倉が安易に和解したり、心を開くようなベタな描写を拒絶した30歳新鋭監督の意気は支持。
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