の・ようなもの のようなものの映画専門家レビュー一覧
の・ようなもの のようなもの
2011年に急逝した「家族ゲーム」「それから」の森田芳光監督の劇場デビュー作「の・ようなもの」の35年後を描く青春ドラマ。生真面目で冴えない落語家が、落語を捨てのんびりと暮らす兄弟子と出会い、自分らしく生きる楽しさを知っていく。監督は長年、森田組を助監督として支え続けた杉山泰一。出演は「僕達急行 A列車で行こう」の松山ケンイチ、ピエール瀧、「間宮兄弟」の北川景子、塚地武雅、佐々木蔵之介、「の・ようなもの」の伊藤克信、尾藤イサオ、でんでん、「メイン・テーマ」の野村宏伸、「椿三十郎(2007)」の鈴木亮平、「家族ゲーム」の宮川一朗太、「39 刑法第三十九条」の鈴木京香。
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評論家
上野昻志
森田芳光の劇映画デビュー作「の・ようなもの」はリメイクであれ、続篇であれ、作るのは難しかったと思う。だが、杉山泰一は、それに怯むことなく、よくやっている。なによりも、松山ケンイチの志ん田と、前作の主人公伊藤克信の志ん魚の絡みがいい。わけても落語を捨てた志ん魚が、志ん田の熱に押されて、金魚の話を作り出していくくだり。それにロケーションの選び方もなかなか。実際、大樹を元にしたY字路など、実際に行ってみたいと思うくらいだ。あと着物で走る北川景子。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
(なんか今回この欄は現代版の芸道もの、のような、演じる表現者が主人公の映画が多い。なぜ?)本作は森田芳光作品群の延長線上にあると考えざるを得ないが、最も直接的に関係ある前日譚「の・ようなもの」の、なぜそれが名場面なのか説明できないがとにかく名場面のような、主人公志ん魚が土地土地と自らの名しんととを混ぜ合わせるようにつぶやき歩く、道中付けのグルーヴはないものの、「僕達急行 A列車で行こう」より格段に現在の映画、新作感があり、そのことに何かハッとする。
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文筆業
八幡橙
「の・ようなもの」から35年。ただ、ひたすら懐かしい。松田優作の3回忌の頃、森田監督にインタビューした際、「(松田優作が)“の・ようなもの”を絶賛してくれたけど、当時本当に見ていたかはわからない」とのエピソードを語ってくれた日のことなどが蘇った。伊藤克信の変わらぬ純朴さ、松山ケンイチの生真面目ぶり、森田作品を彩った役者たちのカメオ出演……。没後4年にして作られた、“森田芳光映画祭り”ともいうべき一本。監督と映画に対する愛を感じる、気持ちのいい作品に。
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