Mr.ホームズ 名探偵最後の事件の映画専門家レビュー一覧
Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
「ロード・オブ・ザ・リング」のイアン・マッケラン演じる探偵引退後のホームズが10歳の少年を新たな助手として迎え、自身を引退に追い込んだ30年前の未解決事件に再び挑むミステリー。監督は「ドリームガールズ」のビル・コンドン。出演は、「ラブ・アクチュアリー」のローラ・リニー、「ラストサムライ」の真田広之。
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映画・漫画評論家
小野耕世
敗戦直後の一九四七年の日本に現れるホームズは93歳という設定。原爆被災の広島には樹木が倒れず多く残っているのが変に見える。真田広之が登場するなど、老境の名探偵を過去の事件や記憶が複雑に追ってくるのだが。そうした謎解きの部分よりも、引退先のサセックスの田舎で養蜂業にひたる彼と下宿の女主人とその息子の少年との三人の関係描写が味わい深い。彼が六個の石のあいだにひざまづく左上の空に、昼間の細い三日月を一瞬だけ示す画面は、忘れ難い印象を残す。
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映画ライター
中西愛子
ワトソンが出てこない晩年のホームズの物語。田舎で隠居生活を送るホームズは、引退を決意した30年前の事件の記憶を手繰り寄せていた。鋭い知性と観察力、直截的な物言いが魅力の名探偵は、若い婦人の奇怪な行動を推理した時、大きな失敗をしたのだった。事実を突きつけるだけでは解決できないこと。最晩年の彼は何かを学ぶ。イアン・マッケランが見事。後半、“セルフィッシュ!”と自らに吐き捨てる姿に泣けた。家政婦役のローラ・リニーもいい。新たな角度から見たホームズ譚。
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映画批評
萩野亮
ホームズのような虚構内人物も年端をかさね、老いて「終活」をはじめる時代がきたのか。「高齢化社会の想像力」という語が思わずうかんだ。シャーロキアンへの目くばせもさることながら、ふたつの時代を演じ分けるイアン・マッケランがさすがの貫祿。こちらも背筋がのびる。サセックスの海辺の田園風景も絵画的で美しいが、作品としては回想場面を挿入する手ぎわがどうもスマートでない。蜂・手袋・山椒など、記憶のカギとなる物の存在がいまひとつ息づいてこないのが惜しいところ。
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