ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命の映画専門家レビュー一覧
ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命
第二次世界大戦中、300人ものユダヤ人をナチスの迫害から救ったポーランドの動物園経営者夫妻の実話を映画化。大戦勃発後、ヤンとアントニーナの夫妻は、経営する動物園にゲットーから救出したユダヤ人を匿う。だがそれは、自らをも危険に晒す行為だった。出演は「女神の見えざる手」のジェシカ・チャステイン、「オーバー・ザ・ブルー・スカイ」のヨハン・ヘルデンブルグ。メガホンを取ったのは「スタンドアップ」のニキ・カーロ。
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翻訳家
篠儀直子
「女神の見えざる手」でも素晴らしかったJ・チャステインが、まったく違う役柄を演じた今回も素晴らしい。圧倒的な支配におびえながらも善き人間であり続けようとする女性を、初めて見る表情と台詞回しの彼女が見事に体現する。常軌を逸した事態が文字どおり女性の視点で描かれ、いくらでも扇情的にできる題材を、丁寧かつ上品に扱っているのがとてもよい。夫の変化に説得力があるのもさることながら、教養と礼節ある紳士だったドイツ人学者が、権力を手にした途端変貌する恐ろしさ。
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映画監督
内藤誠
邦題は分かり易いが、内容は複雑。ワルシャワの動物園主の夫人、アントニーナをジェシカ・チャステインが熱演して、冒頭、母象の前で小象の鼻がねじれたのを直す演技にもうびっくり。夫のヤンと共に動物園内に戦時下のユダヤ人をかくまうわけだが、ナチス軍隊の指揮官がヒトラーのお気に入りの動物学者だということが、物語を奇怪なものにする。彼は美術品蒐集家ゲーリングを真似て、珍奇な動物をベルリンへ運ぼうとし、すでに絶滅した動物の復活をはかり、夫婦の間に割り込んでくる。
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ライター
平田裕介
自分たちの危険を顧みずにユダヤ人を救う主人公夫妻の行動には、ストレートに感動。ただし、ゲットーからユダヤ人を連れ出すシーンの数々はどれも緊迫感が足らず、夫婦愛と親子愛に迫った部分やワルシャワ蜂起の描写もこれといって密度が高いわけではなく、なんだか散漫な仕上がりに。そんななかでもズドンときたのが、ゲットーの門前で記念撮影するカップルの姿。こうした下劣な連中がナチスのような存在をのさばらせたわけでもあり、そのあたりを無視しないのはナイスだと思う。
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