ベテランの映画専門家レビュー一覧

ベテラン

「ベルリンファイル」のリュ・スンワン監督が韓国でタブー視される財閥の横暴に切り込んだアクション。「国際市場で逢いましょう」のファン・ジョンミン扮するベテラン刑事らと金や権力に物を言わせる財閥3世との攻防をコミカルに活写。不審な自殺の背後に甚大な影響力を持つ財閥の3世の存在を疑う広域捜査隊は、妨害を受けながらも捜査に執念を燃やしていく。「アンティーク~西洋骨董洋菓子店~」のユ・アインが初めて悪役に挑み、「国際市場で逢いましょう」のオ・ダルス、モデルのチャン・ユンジュ、テレビドラマ『ラブレイン』のキム・シフらが個性豊かな広域捜査隊の面々を演じる。公開10周年を記念し2025年4月4日(金)より1週間限定でカムバック上映が決定。待望のシーズン2『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』は2025年4月11日(金)に公開。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    悪役ボンボンの極悪非道ぶりも、香港映画のように賑やかな刑事チームによって相殺され、映画全体は決して重くならない。アクションがフィジカルなギャグにつながっているのも楽しい。その楽しさのせいで(たぶん意図的に)わかりにくくされているけれど、主人公も悪役も「暴力を愛する男」という点で変わらない。無駄に思えたシーンがあとですべて効いてくるかっちりした脚本。クライマックスは、監視映像のない密室で行われた暴力に端を発する事件の結着として、まさにふさわしい。

  • ライター

    平田裕介

    悪役はどこまでも悪く、熱血刑事もひたすら熱い。妙なヒネリなど入れないシンプルを極めた人物設定と対立構図によって、観る者のハートを燃やす熱伝導率がエライことに。おかげで、序盤からクライマックス並みのアゲ感が押し寄せてくる。庶民の野次馬根性と必携アイテムであるスマホが巨悪を追い詰める決定打になるのも痛快だ。ただし、ファン・ジョンミンとオ・ダルスをのぞく捜査チーム各メンバーの個性と活躍を打ち出せていないのが残念。オ・ダルスは主人公以上に輝く瞬間がある。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    大韓航空のナッツ姫事件を始め続出する大企業の世襲による腐敗は韓国民の怨嗟の的だ。それを思い切り戯画化、笑いと憎悪の対象に仕立てあげて粉砕してみせる。大ヒットも頷ける。サディストで異常者としか思えない大企業御曹司、その不始末の尻ぬぐいが仕事の常務、想像を絶する悪役コンビをユ・アインとユ・ヘンジが面白おかしく演じている。対するファン・ジョンミンたち広域捜査隊も紅一点を交え、破天荒な人物揃いで、アクション、笑い、スピーディな展開もなかなか快調。

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