愛しき人生のつくりかたの映画専門家レビュー一覧
愛しき人生のつくりかた
フランスの国民的歌手アニー・コルディ主演のヒューマンドラマ。夫に先立たれ姿を消した祖母を探す旅に出た孫が、初めて知った彼女の過去とは。他に、「仕立て屋の恋」のミシェル・ブラン、「ディディエ」のシャンタル・ロビーらが出演。監督・脚本は、「アデル ファラオと復活の秘薬」などの俳優として知られるジャン=ポール・ルーヴ。
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翻訳家
篠儀直子
トリュフォーへのオマージュを交え、バイタリティあふれる老婦人を中心にドラマを展開しつつ、その息子と孫それぞれの迷いと選択を描く。家族写真をはじめとするさまざまな仕掛けが、人の人生の年月をしのばせてじんとさせるのだが、一方でこの映画の最大のよさは、英国風とも米国風とも違うコメディの味わいにある。定年退職した息子、孫のルームメートでいつもナンパに失敗している若者などじわじわ可笑しく、ガソリンスタンド内の店のシーンに至ってはナンセンスコメディすれすれ。
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ライター
平田裕介
新凱旋門、エッフェル塔といった名所が見切れまくり。そんな狭小感満点の状態で映し出されるパリの街並みが、漠然とした不満や不安を抱える各キャラクターの胸中を表すかのよう。一転、彼らがあれこれから解き放たれる契機の地となるノルマンディーは空撮ガンガンの美景バシバシ。こんな具合に風景で情景を語るのだが、それだけに頼らずユーモアと人情味もほどよくまぶされていているのがいい。ミシェル・ブランは役柄といい、ルックスといいフランスの角野卓造と呼びたくなる。
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TVプロデューサー
山口剛
ヒロインの配偶者の葬儀から始まり、彼女自身の死で終る物語だが、陰鬱な悲劇ではなく人生の甘美さ、厳しさがユーモラスに描かれ、いかにもフランス映画らしい映画を観たという心地よい満足感を味わった。アニー・コルディの凛とした佇まい、ミシェル・ブランの自在な可笑しさ、孫役の青年の新鮮さ……三世代を代表する役者たちの最良の部分を引出す演出術は俳優出身の監督ならではのものだろう。給油所の売店主、監督自ら演じるホテルの主人など点景人物の造型、描写も楽しい。
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