ニューヨーク 眺めのいい部屋売りますの映画専門家レビュー一覧

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

全米ロングセラー小説を「ファイヤーウォール」のリチャード・ロンクレインが映画化。ブルックリンの最上階の部屋に暮らすカーヴァー夫妻。エレベーターがないため家を売りに出すことにするが、内覧日の前日、愛犬が緊急入院してしまう。出演は「ミリオンダラー・ベイビー」のモーガン・フリーマン、「恋愛適齢期」のダイアン・キートン、「セックス・アンド・ザ・シティ」のシンシア・ニクソン、TVシリーズ『HAWAII FIVE-0』のクレア・ヴァン・ダー・ブーム。
  • 映画監督、映画評論

    筒井武文

    こちらは長年住み慣れたブルックリン橋の見える部屋を売り、引っ越すお話。画家とモデルだったM・フリーマンとD・キートン夫婦の性格の違いと、部屋の内覧会(部屋自体が主人公)をして、希望者に入札させるブローカーの手腕と訪れる面々が面白い。その主筋に、ブルックリンでのテロ事件のテレビ中継(解決しないと、値段が下がる)と、年老いた愛犬の手術の経過という、2つのサブ・ストーリーが絡むのが絶妙。やはり結末は読めるのだが、それを演出が巧妙にかわしてみせる。

  • 映画監督

    内藤誠

    40年住んでいるうちに値段の上がったマンションを売って新しい部屋に住み替えようと、あたふたする老夫婦と、彼らを取り巻く都会人の人情物語は、東京もどこか似たところがあり、ディテールが具体的で身につまされた。モーガン・フリーマンとダイアン・キートンの夫婦の寄り添い方がみごとで、間に入る不動産女子シンシア・ニクソンの、ニューヨークを生きているという鋭敏な言動もみごと。周りの人間群像も個性的で、街の古い感じも味があり、都会に住むシニアにはお薦め。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    家探しはパートナー探しに似ている。最初は絶対に譲れない条件がいくつもあって、そのうち一つ二つと妥協していき、住んでみればまあここも悪くないかと落ち着く。もちろん他者との競争もあっての決断だ。焦って判断を誤ることもあるかもしれない。子どものいない熟年夫婦が絶景の部屋を手放して格下の家に求めるものが、二人の未来に求めるものと重なって見えてくる。自分一人の才覚で業界を生き抜く二人の不動産エージェントが共に女性なのはとても今日的で興味深い。

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