無限の住人の映画専門家レビュー一覧

無限の住人

第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞に輝いた同名コミックを、三池崇史監督、木村拓哉主演で映画化。無理矢理永遠の命を与えられた孤独な万次に、仇討の助っ人を依頼する凛。失った妹の面影を重ね凛を守ることにした彼は、凄絶な戦いに身を投じる。「武士の一分」以来10年ぶりの時代劇主演となる木村拓哉がかつて百人斬りと恐れられた不死身の男・万次を演じるほか、「湯を沸かすほどの熱い愛」の杉咲花、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の福士蒼汰らが出演。
  • 評論家

    上野昻志

    まあ木村拓哉も、隻眼、顔に刀傷をつけてのチャンバラ・アクション、よく頑張っている。その周りを、仔犬のように、といっちゃ可愛そうだが、赤い着物で走り回っている杉咲花も、柄にあっている。だが、わたしが一番感心したのは、虚無僧姿で登場する市川海老蔵の声だ。歌舞伎役者だから当然と言われるかもしれぬが、この役のために声を作っているのだ。それに較べると、敵役の代表に扮した福士蒼汰の声は、地声のままか、いかにも弱い。ただ、人の数をやたら多くするのはどうかね?

  • 映画評論家

    上島春彦

    監督のノーテンキが良い方向に出た。冗談に近い大殺陣が痛快なのだ。丹下左膳というより無用ノ介みたいな隻眼の浪人木村が仇討ちに加勢する、というのが物語のメインで、この人「体内に仕込まれたヘンな虫のため絶対死なないはず」という設定。まあこの世に「絶対」はない。瀕死のボロボロ状態を何度も経験し、要するに浪人が意外と弱いのがミソ。最終対決相手福士の仕官話というサブストーリーが良く、罠と復讐の波状攻撃がごっちゃに混ざるややこしい作りをスマートに演出する。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    原作は未読。丹下左膳を黒澤時代劇風にやるのかと思ったが、残虐描写も「用心棒」同様の手首切断ぐらいでは物足りない。無国籍風だけに戸田恵梨香の衣裳以外の官能不足も含め、ジャンゴ的なノリが三池映画ならもっと欲しくなる。主人公が自然治癒能力を持つせいか、簡単にやられてしまうが絶対絶命に陥らないと分かっている話に140分は長い。「湯で沸かす~」で好演した杉咲は甲高い声で叫んでいるばかりで、木村の一本調子の声と共に久々に〈声が悪い〉と思わせる映画を観た。

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