オケ老人!の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
“オケ”に“老人”とくれば、どうしても“棺桶”を連想してしまい、実際、劇中でもそんな台詞がある。変化球狙いのタイトルというより、内容に沿っただけのタイトルなのだが、でも正直、“オケ”がオーケストラの略だと知っても“老人”ということばに気後れがして、積極的に観たくなるようなタイトルではない。それでも内容がとびきり痛快なら口込みも期待できるだろうが、これがまた想定内の紆余曲折。趣味を楽しむ年金生活者層向きの映画だからって、安易なご都合主義はヤメてほしい。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
何にでも優劣があり、ほとんどすべての人間が何かしらの基準においては劣位にあり、忸怩たる思いを抱えている。ひと時の夢想や仮構であっても、そのことに対抗しようとする映画は好ましい。大きいものへのアンチや“鶏口となるも牛後となるなかれ”という発想がない今の若者(映画「何者」にも表れていた)であるヒロインの精神的転回を語ることは価値がある。題がボケ老人とかけてあるとか、老人らが死をブラフに使ってくるというエッジさはもっと押してもよかった。
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映画評論家
松崎健夫
老人たちで構成されたオーケストラが、ひとりの若い女性に導かれて成長を遂げてゆく。それゆえ、主人公が教師である設定にも意味がある。“ペンライト”は、その伏線として物語の中に度々登場し、まさに“一筋の光”としてオーケストラを栄光へと導いてゆく。下手な演奏が徐々に上手くなる過程を〈音〉で判らせることは困難を伴う。そのため、楽団員が徐々に増えてゆくことによって生まれる〈音〉の厚みを利用することで、急速な成長を遂げることに説得力を持たせているのである。
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