不屈の男 アンブロークンの映画専門家レビュー一覧

不屈の男 アンブロークン

女優アンジェリーナ・ジョリー監督第2作。第二次大戦中に日本軍捕虜となったオリンピック選手ルイ・ザンペリーニの波乱の半生を綴る。47日間にも及ぶ漂流や捕虜生活など、連続する苦難に決して屈しなかった彼が見つけたものとは……。主演は「名もなき塀の中の王」のジャック・オコンネル。ほか、彼を虐げる収容所署長を日本人ギタリストのMIYABIが、彼と共に太平洋上を漂流するキャプテンを「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」のドーナル・グリーソンが演じる。
  • 映画・漫画評論家

    小野耕世

    太平洋戦争時に日本軍の捕虜となった米軍兵の実話にもとづく映画で、A・ジョリー監督の日本への配慮が感じられる。漂流中の米兵は「日本人(Japanese)は魚を生で食べるんだ」と話し、捕虜になってから初めてジャップ(Jap)と言う。捕虜収容所の日本人軍曹はRoosevelt大統領を正しくロウズヴェルトと発音する。JOAK(NHK)が捕虜を対米宣伝放送に利用する場面は、恐らく映画に初めて描かれたもので興味深い。日本での撮影は皆無だが、各収容所の雰囲気描写は悪くない。

  • 映画ライター

    中西愛子

    なぜこの映画の日本公開が問題視されてきたのか、観終わってみるとわからない。じわじわと心揺さぶる人間ドラマだ。何よりアンジェリーナ・ジョリーの監督力。俳優監督の域を遥かに超えている。引き出しの多さ。持久力と的確さ。静謐を保ちながら、米兵捕虜の主人公ルイの精神性を積み上げていく演出の細やかさに息を呑む。不屈のルイと、彼を痛めつける渡辺の関係性は、「戦メリ」のセリアズとヨノイのそれに似ていまいか。けれどルイは戦後も生き続けた。この事実が本作の肝だ。

  • 映画批評

    萩野亮

    長距離走者として将来を嘱望された主人公が東京に降り立ったのは、五輪選手としてではなく、戦争捕虜としてだった。この伝記的事実だけでグッとくるのだが、この映画がどこか奇異なのは、全篇におよぶその平板さゆえだろうか。前半部分は異様に長いし、日本人軍曹とのホモエロティックな交感の描写も深くない。疑似的な磔刑に至る受難劇としてもあまりにつつましい。しかし、出来事を特権化しないこのつつましさが、ふしぎにいい。「リベラルなイーストウッド」という語がおもわず浮かぶ。

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