牡蠣工場の映画専門家レビュー一覧
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映画・漫画評論家
小野耕世
人々の生活風景は小さな部分から次第に変っていき、気がついたときには時代が変っていた。それは新しい「スター・ウォーズ」の映画を観ても感じたが(この比較を笑って下さい)、これは瀬戸内海をのぞむ牡蠣工場の日常をじっくり追って描くなかで、仕事場の状況が変っていくさまをとらえていく。牡蠣むきは女性のほうが巧みなのはあせらないからで、この映画も長さが重要なのだ。見終ってこの作品の主役は白い猫だと思うのは、この猫が人間たちを尻目に自分を貫いているからだ。
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映画ライター
中西愛子
瀬戸内海にのぞむ岡山の町・牛窓。牡蠣の産地。この地に数週間入り込み、カメラを回す想田和弘が、人々の暮らしの中からグローバル化、少子高齢化、過疎化、震災など、いまが抱える問題を浮かび上がらせる。印象としては、意外と華やいだ作品なのだ。それは、カメラを持って問いかける監督の存在が、被写体となる人々に何らかの刺激を与えていて、その時間は彼らにとって少し特別なハレの日常になっているからじゃないだろうか。登場する人々が妙に魅力的。監督のフィクションも観たい。
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映画批評
荻野亮
夢中になって見ていた。瀬戸内の冬を呼吸するような編集のリズムがとてもよい。小さな漁港から移民労働や震災復興といったニッポンの現在が浮き彫りになる構成だが、想田監督の作品歴ではおそらくテーマに対してもっともひかえめな作品で、そのことがほどよく観客の想像力を刺戟してくれる。合衆国の病巣をえぐり出すワイズマンの犀利な「観察」とは異なる、独自のやわらかい観察眼がもっともよくあらわれた一作だと思う。すばしこい子どもたちと白猫シロちゃんの活躍がいたって愉快。
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