エミアビのはじまりとはじまりの映画専門家レビュー一覧
エミアビのはじまりとはじまり
「舟を編む」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞に輝いた渡辺謙作のオリジナル作。漫才コンビ『エミアビ』の海野が事故死。実感がない相方の実道は、海野と共に亡くなった雛子の兄でお笑い界の先輩だった黒沢に会いに行き、乞われるままネタを披露するが……。「見えないほどの遠くの空を」の森岡龍と「鬼灯さん家のアネキ」の前野朋哉がお笑いコンビ『エミアビ』の二人を演じ、本格的な漫才に挑戦している。ほか、「リップヴァンウィンクルの花嫁」の黒木華、「百円の恋」の新井浩文らが出演。
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映画評論家
北川れい子
ネット配信ドラマ『火花』が残念だったのは、劇中の舞台やテレビで演じているお笑いが、まったく笑えなかったこと。むろんメインはお笑い芸人たちのステージ外の話なのだが、どこかで笑える芸も見せてほしかった。その点、本作は、人物たちを中心軸にした悲劇と笑いがシーソーのように上がったり下がったりし、話が深刻になると茶々を入れるようなエピソードを用意、アゼンとしながらもつい笑ってしまったり。ボケとツッコミに、更なるツッコミを入れた渡辺謙作の脚本・監督に座布団を。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
森岡龍、前野朋哉それぞれの監督作を観たことがある。それが面白い。最近の現象か、彼らと同世代で、映画好きで、映画のことをよく知っている若い俳優が増えているのは。で、そういう俳優をつかう監督は緊張するんじゃないかと勝手に臆測してしまう。監督渡辺謙作、こんなにブランクあったのか。大丈夫か…。…あ、面白い! 森岡、前野がすごく魅力的! 繰り返される、笑わせろ! というシチュエーションが優れている。リアルとファンタジーの兼ね合いが良く、最高地点到達作品だ。
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映画評論家
松崎健夫
本国で大ヒットを記録しようともハリウッド製コメディー映画が日本の興行で不遇な扱いを受けているように、映画における〈笑い〉は難しいとされている。〈笑い〉が本職の北野武や松本人志の監督作品における〈笑い〉でさえ、揶揄の対象となるのだから尚更である。本作の漫才コンビ“エミアビ”が、実際に『M1グランプリ』の1回戦を突破したことが報じられた。現時点で最終結果は出ていないが、映画の中の〈笑い〉が如何なるものであるかは、現実の?末が示してくれるに違いない。
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