たたら侍の映画専門家レビュー一覧

たたら侍

EXILE HIROプロデュースのもと、劇団EXILEの青柳翔と錦織良成監督が「渾身 KON-SHIN」に続いてタッグを組んだ時代劇。戦国時代末期、奥出雲に伝わる幻の鋼を代々作る家に生まれた伍介は、村を守るために強くなろうと侍を志すが……。ほか、ダンス&ヴォーカルユニットEXILEおよび三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEのパフォーマー小林直己、「0.5ミリ」の津川雅彦らが出演。第40回モントリオール世界映画祭最優秀芸術賞受賞作品。劇場公開に先駆け、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017にて上映(上映日:2017年3月4日)。
  • 映画評論家

    北川れい子

    うーん、もどかしい。これで脚本にもう少し重量感があり、人物たちにクセや個性があったら、「七人の侍」とは言わないまでも、それに近い作品になったに違いない。出雲の風土の神秘的な映像や、豪雨の中での斬り合いなど、実に風格がある。冒頭近くで、この地特有の“鉄”造りの技術を丁寧に見せているのも、伝統を守ろうとする村人たちの思いが伝わってくる。ここで造られる鉄が逆に戦いの火種となるのだが。ともあれご当地映画の枠を大きく超えた力作であることは間違いない。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    飲み屋で騒ぐガラの悪い人たちのタイプそのままの、ザイル系が苦手だ。彼ら関係のものを避けたい。自分で選択できるのなら観たくない。しかし本欄対象作品となったため観た、劇場版「HiGH&LOW」は面白かった。そこでやたら地味なのに役が大きい青柳翔氏は気になった。その彼主演で時代劇。渋い。チャンバラ主眼でなく史観や文化を語ろうという作品。渋い。封建主義に従順すぎるのはろくでもないが池谷仙克美術はいい。本作と「無限の住人」の中間に新たな地平があるのではないか。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    ここ数年、世界で同時多発的に〈巨壁〉の登場する映画が製作されている。それらの〈壁〉は例えば、何かからの襲撃を防ぐものであったり、何かと何かを隔離するためのものであったりする。本作にも〈壁〉が登場するのだが、〈壁〉の意味するところが変化してゆくところに、その議論のありかを導ける。奇しくも、我々が暮らす現実の世界においても〈壁〉を建設しようとする動きがある。そのことを予見したかのような日本の時代劇が海外で評価された点は、特筆に値するのではないか。

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