砂上の法廷の映画専門家レビュー一覧

砂上の法廷

初監督作「フローズン・リバー」が高評価を受けたコートニー・ハントが、キアヌ・リーヴスとタッグを組んだ法廷ミステリー。ある殺人事件の被告となった少年の裁判の過程で、証人たちの嘘に覆い隠された意外な真実が明らかになってゆく。共演は「コールド マウンテン」のレニー・ゼルウィガー。エリア・カザンの息子で「悪魔を憐れむ歌」などを手掛けたニコラス・カザンが脚本を担当。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    思わず「何ですと!?」と言いそうになった結末には賛否両論出そうだが、アメリカ映画の法廷物はそもそもテッパンとはいえ、複数回ある衝撃の展開で、毎回必ず大きな衝撃を与える演出はかなり巧み。面白さのポイントは、映画の開始と終了を裁判のそれと一致させていることと、被告となる少年を、法律の知識と観察眼を有する明敏な秀才に設定したこと。当初主役にはダニエル・クレイグが予定されていたらしいが、キアヌが演じたことで作品の色合いがどう変わったかを考えるのも一興かと。

  • ライター

    平田裕介

    人種や貧困という問題を、スリリリング極まりない犯罪劇へと落とし込んだ「フローズン・リバー」。その監督の第2作、しかも彼女自身も弁護士資格を保有。ゆえに期待が高まったが、なんとも陳腐な出来栄え。真実を追わずに無罪を作り上げる米法曹界の実情を抉ろうとしているのは伝わるが、なんとなくわかってしまう真犯人、安っぽいメロドラマな真相、これ見よがしに映す“正義の女神”像と、決定的な証拠が出てこぬ物語に反してダメな要素が続々と突き出されて萎えたまま閉廷する。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    ネタバレを気にする風潮が映画の観客や言説を衰弱させているという説が最近ある。良い映画はネタバレ如きで価値をなくさないと言うわけだ。基本的に賛成だが例外もある。ヒッチコックの「サイコ」、ワイルダーの「情婦」、クルーゾーの「悪魔のような女」のような結末の意外性に賭けた作品だ。本作もその一つ。最後まで意外な結末を期待して面白く観た。脚本は一寸ズルイところがあり、結末の詰めがいささか甘いが、良くできている。ミステリーファン必見。ネタバレを読まないで観て欲しい!

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