トランボ ハリウッドに最も嫌われた男の映画専門家レビュー一覧

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

偽名で「ローマの休日」などの脚本を執筆し、アカデミー賞を2度も受賞したダルトン・トランボの生涯を描いた伝記ドラマ。“赤狩り”の嵐吹き荒れる1950年代、下院非米活動委員会への協力を拒否したトランボはハリウッドを追放されるが……。トランボを演じたブライアン・クランストンが、アカデミー賞候補となった。共演は「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」のダイアン・レイン、「黄金のアデーレ 名画の帰還」のヘレン・ミレン、「マレフィセント」のエル・ファニング。メガホンを取ったのは、「奇人たちの晩餐会 USA」のジェイ・ローチ。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    映画史的な知識としては知っていた筈の話でも、こうして生身の役者たちによって熱を込めて演じられると、あらためて事実の重みに震撼せざるを得ない。トランボ役のブライアン・クランストンが素晴らしい。クレジットを見るまでわからなかった妻のダイアン・レインも。信念を貫くとは如何なることかを黙々と丁寧に描いた監督の誠実さにも惜しみない賞讃を送りたい。こんなに胸が熱くなった映画は久しぶり。しかしこれを見てますますコーエン兄弟が何を考えてるのかわからなくなった。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    裸でバスタブに浸かりながら執筆するトランボの姿が強烈だ。電話も灰皿もすべてその中から手の届くところにある。バスルームが彼の書斎だった。それが生前のトランボのスタイルを再現したカットであることは、後に出てくる本人の写真が物語っているが、フィクションとしては口惜しいほどにビジュアル映えすると同時に、長らく日の目を見ることができなかった彼の苦境が、ユーモラスな味わいの後からじわじわと染みてくる。ジョン・グッドマンの振り切れた好演も感動レベル。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    ハリウッドの赤狩りという歴史的政治的事件を、一作家の家庭に絞って描くという意図は成功している。最後にトランボ本人が終始支えてくれた家族、特に娘に対し述べる謝辞は感動的だ。彼らの団結に大きな亀裂を与えた、カザンやオデッツ、ドミトリクの証言には触れず、友好的証人として、ジョン・ウェインとE・G・ロビンソンしか出さないのは、いささか疑問だが、赤狩りの問題は今後もなお語られるべきで、このような作品が作られるアメリカ映画界の土壌には敬意を表する。

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