ママ、ごはんまだ?の映画専門家レビュー一覧

ママ、ごはんまだ?

歌手・一青窈の姉、一青妙によるエッセイを原作に「劇場版 神戸在住」の白羽弥仁監督が映画化。台湾人の父と日本人の母の間に生まれた姉妹。二人が家族で暮らした家を取り壊す時に見つけた赤い木箱の中には、亡き母が書いた台湾料理のレシピ帳が入っていた。出演は「グッドモーニングショー」の木南晴夏、「父の初七日」の呉朋奉、「花芯」の藤本泉、「エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)」の甲本雅裕、「ふしぎな岬の物語」の春風亭昇太、「悲しき天使」の河合美智子。一青家のゆかりの地である石川県中能登町の町制10周年記念事業として製作。全国公開に先駆け、2017年2月4日より石川県先行公開。
  • 映画評論家

    北川れい子

    石川県の中能登町が町制10周年記念事業として製作したというこの作品、言っちゃあなんだが、個人が自費出版した私家版の映画化のよう。むろん個人が自分の人生や家族の歴史を描いた私家本にも普遍的な内容のものはあると思うが、一青姉妹の母親の人生を描いたこの作品、母親役・河合美智子の柄と演技のせいもあるのだろうが、箇条書きのような脚本とそれをなぞるだけの凡庸な演出は、ホームビデオの域を出ない。ま、登場する台湾料理は確かにおいしそうだが、それっきりでは……。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    私は一青姉妹と同年代だが、この映画が描く思い出の味のような、生々しい体験と記憶による家族文化の継承を持たない。ばらけた家庭と故郷喪失が多い現在、そういう人も少なくないはず。んなもん知るかという態度で過ごしてきたが、まかり間違って家族など持つと妻と子に伝えるものがないことに、なんかすいませ~ん、という気持ちになるのも事実。そういうことに気づかされる映画だ。河合美智子が良い貫禄だった。あと中能登と台南のエキストラのひとたちの存在感に見入った。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    一青窈の「窈」は“「ようちょう」と打たないとパソコンで変換されない”と、かつて御本人が仰っていたことがある。その〈周囲の誰とも異なる〉名前であることが、奇しくもこの物語のオリジナリティに反映されている「妙」。そして、料理は味だけでなく、音によっても思い出を呼び覚ますという「妙」。存命で現役の著名人を描く作品は海外に多いが、日本では意外と少ない印象がある。そういう意味でも、国境を越えた一青一家の人生が如何にドラマチックであったのかを悟らせるのだ。

1 - 3件表示/全3件