ペレ 伝説の誕生の映画専門家レビュー一覧
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映像演出、映画評論
荻野洋一
サッカー映画はつねにサッカーに敗北する。ボールと芝生と二本足だけで織りなされてきた美しき即興芸術の粋を、ハリウッドがいくら高度な映像技術で再現/拡張しても、得てして徒労に終わる。敗北の自覚を前提とした時、かろうじてサッカー映画は退廃を免れる。しかし本作は、ブラジル選手の妙技を潤沢な予算でスペクタクル化すれば、さぞかし楽しいだろうという素朴な期待感によって作られたようだ。評者には本作が“慎み深い「少林サッカー」”に留まっているように思える。
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脚本家
北里宇一郎
ご存じペレが初出場の世界大会で大活躍、チームを勝利に導くまでを描いて。貧乏な子ども時代から苦労してのし上がるプロセスはお約束通りの展開と演出。ペレを差別するエリート白色人種の描写が型どおりの悪役タイプなのが味気ない。が、彼らも欧州人に劣等感を持っていたと判るあたりにヒネリが。ウルグアイに逆転負けしたショックで、チーム全体で得意の個人技を封印するという内幕も面白い。最後に自国民族の誇りを謳いあげるのは、いかにも今風の感。アメリカ人の製作なのにね。
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映画ライター
中西愛子
サッカー界のレジェンド、ペレが、貧困の中から頭角を現していく少年時代の姿を描いたサクセス・ストーリー。サッカー・ファンでなくとも、正攻法に盛り上がるスポーツ映画として楽しめる。私は特に、幼少よりペレの身体に馴染むジンガというブラジル特有のテクニックにまつわる、文化的エピソードが面白かった。ヨーロッパに対してのブラジルという視点が生きている。最年少17歳で出場したワールドカップで、そのスタジアムを初めて踏んだペレが、観衆を悠然と見渡すショットが好きだ。
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