マイケル・ムーアの世界侵略のススメの映画専門家レビュー一覧

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ

「ボーリング・フォー・コロンバイン」のマイケル・ムーア監督による世界侵略をテーマとしたドキュメンタリー。アメリカ国防総省の相談を受けたムーアは、侵略者として自ら空母でヨーロッパに向かい、侵略する国に存在する“あるモノ”を略奪する。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    M・ムーアのこれまでの作品同様、一本の映画として評価せよと言われたら限りなく否定的にならざるを得ないが、突撃世直しセルフ・ドキュメンタリーとしては、気持ちはよくわかるし健闘していると思う。各国のエピソードはいずれも興味深いが、中でもチュニジアの女性ジャーナリストが「アメリカ人」に向けたメッセージは感動的。しかし観てて次第に気が滅入ってきた。率直に言ってニッポンはムーアが繰り返し嘆いてみせるアメリカの現状より酷く、更に酷くなっていく可能性が大だから。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    登場する各国の企業は誰もが知る一流どころばかり。業績もネームバリューもあるそれらは対内的にも対外的にも社員制度や福利厚生を充実させる必要とメリットがあり、本作への出演だって恰好のアピールになる。だがそれを国の実態と結びつけるのは危険すぎる。アメリカだってピクサー社の施設は素晴らしいし、日本も有名企業の正社員の待遇はいいが、表に出てこないブラック企業のほうがずっと多い。というところまで考えるきっかけとしては十分に機能している。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    年間8週の有給、昼休みが2時間のイタリア、フルコースの給食が出るフランス、大学授業料無料のスロベニアなどなど、各国のすぐれた政策を略奪して母国に持ち帰ろうというマイケル・ムーアの企画。いつもながら彼のキャラクター、話術と相まってワンマンショーの面白さだ。彼の意見は一見、過激で極論に聞こえるが、極めて正論。彼が自虐的に比較してみせるアメリカに無批判に追随している我が国が情けない。知性のある人間が国の方向を決定している国々を羨ましく思う。

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