祈りのちからの映画専門家レビュー一覧
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翻訳家
篠儀直子
選挙の年に米国で増えるキリスト教宣伝映画の一本(前々号もこんなこと言ってましたね)だが、ラストのモンタージュ・シークエンスの政治的メッセージの露骨さにはいくらなんでも引く。そのうえ、話がぺらぺらなだけでなく構成もずたずた。ほかの映画とは明らかに「別の種類の商品」なのだから、こんなふうに並べて星をつけられるのは不本意なのではないかと気の毒にさえなってくる。ダブルダッチの演技が見られるのは面白かったが、これだってもう少し撮り方というものがあるだろう。
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映画監督
内藤誠
日本で連続公開される、ハリウッド製クリスチャン映画の一本だが、かつてのセシル・B・デミル「十戒」に代表されるような大作然とした装いのないのが現代的。冒頭から黒人中産階級の生活ぶりが描かれていくので、そのリアリズムを楽しんでいると、突如、サラリーマンの夫が会社の金を使い込み、浮気をしかける。妻は動揺するが、クリスチャンの老婦人が登場。「祈るときには、自分の奥まった部屋に入り、隠れた所におられる父に祈れ」とさとす。祈りと縄跳び競争がクライマックス。
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ライター
平田裕介
どんな障害も苦悩も、それらに負けませんみたいなことを書いたメモをベタベタと貼った納戸で神に祈っていればオール・クリア。その問題が人そのものであったり、人が起こしたものならば、神でなくて人が対処すべきだと考える自分には噴飯もの。結構な悪事を働く主人公の夫が信心深くなったことで許されたりするのだが、これって神の名のもとにならばなにをしてもいいと言っているようで怖い。観終わった後に「エクソシスト」「オーメン」両シリーズで“お目々直し”をしたくなった。
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