スティーヴ・マックィーン その男とル・マンの映画専門家レビュー一覧
スティーヴ・マックィーン その男とル・マン
モータースポーツに並みならぬ情熱を燃やした俳優スティーヴ・マックィーン悲願のカーレース映画「栄光のル・マン」の製作を振り返るドキュメンタリー。夢を追いかけるあまりに監督と対立、困難を招きキャリアに大ダメージを与えた制作過程を追う。新たに発見された未使用の映像やメイキング素材、スタッフやドライバーが個人的に撮影した映像、マックィーンのボイス・ レコーディング、当時の関係者のインタビューを盛り込み、「栄光のル・マン」の裏側を描き出す。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
マックィーンは今では、なかば忘れられたスターの一人と言っていいだろう。日本のファンには馴染み深い「栄光のル・マン」の製作秘話を中心に、多数の関係者の証言とファウンド・フッテージを駆使して、その人となりを描き出すドキュメンタリー。マックィーンという人間が、彼が好んで演じた役柄とそっくりの性格だったということがよくわかる。一本気で、豪放で、かつナイーヴ。しかし一本の映画をめぐるトラブルが、これほどまでにかかわった人たちの運命を変えてしまったとは!
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映画系文筆業
奈々村久生
強すぎる愛情は時に破滅を招く。マックィーンがドキュメンタリー的な撮り方にこだわった「栄光のル・マン」だが、それにまつわる彼自身のエピソードこそが、最高にドラマティックで泣ける映画的要素であった。カーレースに対するマックィーン個人の熱狂的な思い入れは、俳優という枠を超えて映画に関わることで、本人の思惑に反して映画そのものを窮地に追いやる。俳優とスターの違いを語る証言は言い得て妙だ。レーシングカーが走り抜ける排気音の通過が何よりの劇版となっている。
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TVプロデューサー
山口剛
監督脚本不在のまま迷走を続ける「栄光のル・マン」の制作裏話はスター映画の裏面を見せて面白い。ジョン・スタージェスはG・ラヴェルの評伝によれば「大脱走」でマックィーンともめた際、「ジェイムス・ガーナー主演で撮り直す、ギャラは払うから降りてくれ」とハッタリをかませ完成させたが、再び対立した今回、金はあるし歳もとったといち早く自ら降板したという。宿敵ガーナー主演のフランケンハイマー「グランプリ」がいち早く先行公開されたのが何とも皮肉だ。
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