3月のライオン 前編の映画専門家レビュー一覧
3月のライオン 前編
将棋を題材にした羽海野チカの同名コミック実写化二部作前編。中学生で異例のプロ棋士デビューを果たした桐山零。若き天才と言われる一方で、家族も居場所もない孤独な彼は、川向うに住む川本三姉妹はじめ温かな人々との交流や数々の対局を経て成長していく。監督は「るろうに剣心」シリーズの大友啓史。苦悩しながら再生していく主人公を「バクマン。」の神木隆之介が演じるほか、佐々木蔵之介、倉科カナ、染谷将太らが出演。激しくぶつかり合う将棋の世界
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評論家
上野昻志
最近、この手の前後2篇に分ける作り方が増えているようだが、どうなのか? 物語の長さから必然的にそうなる場合を除いては、興行側の思惑からきたとしか思えない。本作にしても、話をきっちり詰めれば、二時間程度の映画に収まったのではないか? そう思うのは、回想シーンがやたら何度も繰り返されるからだ。そこまで念押ししなくても、事故で天涯孤独になった主人公には将棋しか頼るものはなかったというのは、わかるって。将棋だけでなく家族の問題もあると言いたいのだろうが。
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映画評論家
上島春彦
岩松了が「キリヤマ君キリヤマ君」と言う度に『時効警察』を思い出し、笑ってしまったがこっちの桐山は天才棋士。大友監督、久々に肩ひじ張らない演出が快調だ。アニメっぽいキャラと素顔の俳優を活かしたキャラを混ぜ込んでいるのもお楽しみ。声に無頓着な観客だと染谷に気づかないのではないかな。天才の孤独というテーマは重いが、家族との確執と同時に自分で師匠、佐々木蔵之介を見つける成長物語が盛り込まれ、とても好印象。悪女有村架純に当方のM心もくすぐられてしまった。
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映画評論家
モルモット吉田
昨年の監督作2本が凡作だったので期待薄だったが、ドラマと将棋盤を囲む動かないアクションを鮮やかに両立させている。秀作「聖の青春」が先行して分が悪いのだが、実際に増量した松ケンと特殊メイクの染谷が象徴するように映画化へのアプローチが尽く対照的なのが良い。漫画的な過剰さを活かし、盛り込みすぎると思うほどドラマを作りながら、演出は逆に抑え気味にすることで絶妙の調和を見せている。奇をてらわない対局描写、神木は当然、ビッチの有村、担任の高橋一生も出色。
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