イレブン・ミニッツの映画専門家レビュー一覧
イレブン・ミニッツ
イエジー・スコリモフスキが、午後5時からの11分間を舞台に、大都会で暮らす人々の姿と、やがて訪れる運命を描いた群像劇スタイルのサスペンス。起承転結や詳細な心理描写、背景説明などを排除、各々のドラマをモザイク状に配置した斬新な手法が見もの。出演は「ベルファスト71」のリチャード・ドーマー、「カティンの森」のアンジェイ・ヒラ。
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翻訳家
篠儀直子
人物の「心理」や「性格」とはまったく別のところに面白さがあって、複数の場で進行する11分間が、行きつ戻りつオーバーラップしつつ語られる81分。この着想自体は別に新奇なものではないが、監督の年齢からいって堂々たる巨匠の仕事として撮られていても当然なところを、映像と音響に若き俊英のみずみずしさがみなぎっているのが恐ろしい。細かなサスペンスの積み上げの果てに訪れる、クライマックスからラストまでの息を呑むような鮮やかさは、映画にのみ可能な魔法というほかない。
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映画監督
内藤誠
警察の力というよりは監視カメラが次々に事件を解決していく現代において、スコリモフスキ監督が監視カメラ、Webカメラ、カメラ付き携帯、CGといった技術を駆使して日常生活にひそむサスペンスを撮り、しかも群像劇だという。「早春」などのファンとしては驚くが、巨匠は、大学の卒業制作のような初々しさで作品に取り組み、実験精神も旺盛。惜しむらくは登場人物に魅力が欠けていること。女優を口説くためだけに映画を撮る監督の場面も退屈で、クライマックスを待ちこがれた。
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ライター
平田裕介
ありとあらゆるガジェットやデバイスを介した映像、常に鳴り響いているさまざまな街の雑音、なにやらワケありの人物たち。緻密かつ混沌とした群像劇にザワザワさせられ、それが頂点に達したところで訪れる大惨劇にただただカタルシス。9・11と3・11が頭によぎる“5時11分”をめぐる物語だが、あれこれ考えさせる以前にとにかく映像で畳み掛け、押し切る、スコリモフスキ御大の力技に唸るばかり。また、大惨劇なのに美しく撮ってしまう彼の映画監督としての性も愛おしかったりする。
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