追憶(2017)の映画専門家レビュー一覧
追憶(2017)
監督・降旗康男、撮影・木村大作のコンビ15作目となるヒューマンサスペンス。幼少期を共に過ごした少年3人が、一つの殺人事件によって刑事・被害者・容疑者として25年ぶりに再会し、事件の真相そして心に蓋をしてきた忌まわしい過去と対峙する姿を映し出す。出演は「海賊とよばれた男」の岡田准一、吉岡秀隆、「ミュージアム」の小栗旬、「GONIN サーガ」の柄本佑、「海街diary」の長澤まさみ、「RANMARU 神の舌を持つ男」の木村文乃、「百円の恋」の安藤サクラ。原案・脚本は「グラスホッパー」の青島武と、同作で監督を務めた瀧本智行。音楽は「風が強く吹いている」の千住明。
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映画評論家
北川れい子
冒頭の映像の重量感に思わず背筋がピンとする。厳寒の日本海。25年前の12月24日に北陸で月蝕があったという字幕も、そのあとの3人の少年の思いつめた表情も、映画の導入部として巧みである。けれども沈黙を守ることになるその日のある出来ごとはともかく、25年後に再会した3人の設定と意味ありげな言動は、仰々しい割に底が浅く、脚本のザックリ感は否めない。男たちがみな昭和的なのに、女はしっかり平成を生きていて、それにはナットクしたが。因みに高倉健とは全く無関係でした。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
座組みから絶対鬱陶しい映画だと思った。だから試写を観に行ったとき、自分、完全に目が死んでいたはず。しかし見始めたら面白くてびっくりした。「飢餓海峡」とか「砂の器」的な、昭和の日本人が好きなタイプの和モノ因果ミステリが平然といまの世に蘇っている。湿度が高いながらもエンタメ以外のなにものでもない。台詞が説明的すぎる感じがあったけれど基本の設定が良い。刑事の岡田准一が遭遇する事態はオットー・プレミンジャー監督作の「歩道の終わる所」みたい。これはあり。
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映画評論家
松崎健夫
本作の〈雨〉には重量がある。土砂降りの水量は物質的な重さを伴い、視覚的にも雨粒に〈重さ〉を感じさせる。映画における〈雨〉は、往々にして〈悲しみ〉という感情を伴わせているが、ここではより深い、あるいはより重い〈悲しみ〉を描くものとなっている。またそれは、降り積もる雪が溶け、過去の思い出の塊が瓦解した破片のようにも見える。それゆえ〈雨〉は、その場にいる人間へ突き刺さるように降り注がれるのである。マルチ撮影を担う“撮影者・岡田准一”のクレジットも一興。
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