ボヤージュ・オブ・タイムの映画専門家レビュー一覧
ボヤージュ・オブ・タイム
「ツリー・オブ・ライフ」のテレンス・マリック監督が、革新的な視覚効果を用いて宇宙の壮大な足跡を映し出すドキュメンタリー。爆発によって宇宙が誕生し、惑星が変化を遂げていく中で宿り育まれてきた様々な生命の歩みを辿りながら、人類の未来を探求する。ナレーションは「キャロル」のケイト・ブランシェット。視覚効果は「ツリー・オブ・ライフ」のダン・グラス。プロデューサーに「白い帽子の女」のブラッド・ピットが名を連ねる。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
「ツリー・オブ・ライフ」以降のテレンス・マリック作品は、ある意味どれも同じで、前作「聖杯たちの騎士」の時も書いたが、アレを深淵と捉えるかワケわからんと思うかは観客次第。そして私は「ワケはわかるが深淵では全然ない」派である。少なくともこの作品で語られているようなことは、思想とか哲学とか呼べるようなものでは全くない。ほとんどいかがわしい宗教にも近い浅薄極まりない世界観だと思う。劇映画の口実を外すとこうなるわけか。これを有り難がってはダメですよ。
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映画系文筆業
奈々村久生
もはや完全な環境映像だ。そう言い切っても許されるだろう。近年のテレンス・マリック作品においていよいよ顕著になってきた、ゆえにその要素を映画としていかに咀嚼すべきか悩まされてきた「映像は美しい。だが」もしくは「だが映像は美しい」問題は、本作においてようやくシンプルかつ明快な解にたどり着いた。サイエンスに振り切ってテーマと映像がシンクロした分、ポエティックな内省ドラマが映像のBGMのようだった「聖杯たちの騎士」よりよっぽどキレキレで攻めている。
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TVプロデューサー
山口剛
巨大ビジネスと化したハリウッド映画とは対極の映画作りをしているテレンス・マリック。前作「聖杯たちの騎士」はストーリーの全くない映像詩だったが、今回はビッグ・バンから始まる十億年以上にわたる地球の歴史だ。何しろ誰も見たことのない世界が再現されるから息を呑む。原始人以外俳優は一人も出てこない。地球の歴史は人類の歴史となり未来へ繋がる。世界各地の映像が短いカットバックで挿入され、彼の哲学、歴史観がうかがわれる。次回作は何処へ向かうか気になる。
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